日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
内視鏡使用による下腿動脈への大伏在静脈in situ バイパス
吉本 公洋大場 淳一杉木 聡奥山 淳宮武 司青木 秀俊
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2014 年 23 巻 3 号 p. 681-686

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抄録
要旨:【目的】膝下の膝窩動脈や三分枝以下への大伏在静脈のin situ バイパスには,静脈弁の処理と共に側枝処理が必要となり複数の皮膚切開を要する.それゆえ創合併症の可能性が増し,また美容上の欠点を生ずる.近年,大伏在静脈の内視鏡下採取が可能となり,その低侵襲性ゆえ創関連合併症の減ずる効果を有する.大伏在静脈を用いた下腿への in situ バイパスにおいて内視鏡下静脈採取法を応用した.【方法】本法を間歇性跛行を主訴とする下肢閉塞性動脈硬化症の大腿動脈-下腿動脈バイパスに用いた.皮膚切開は患肢の鼠径部およびバイパス標的動脈部である下腿内側との2 箇所のみである.【結果】2008 年8 月から2012 年6 月まで,5 症例に本法を用いてのバイパス術を行った.全例において術後に間歇性跛行は消失,術後合併症として痺れや創感染症を認めなかった.術後の追跡期間は11 から57 カ月となるが,下肢虚血症状の再発を認めていない.1 例で側副血行路の発達による虚血症状を伴わないバイパス閉塞が確認されたが,ほかでは全例バイパスグラフトの開存が保たれていた.【結論】膝下動脈への大伏在静脈のin situ バイパス術において,大伏在静脈処置に内視鏡下静脈採取装置を用いることで,大伏在静脈の分枝の同定と遮断処理が確実に合併症なく施行可能であり,また皮膚の追加切開が不要ゆえ創合併症の軽減と美容面の利点を得られた.内視鏡を用いた本術式は,大伏在静脈のin situ バイパス術において有用と考える.
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