日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
B 型大動脈解離に対する治療戦略 ―手術症例を中心に―
山城 聡新垣 涼子前田 達也喜瀬 勇也稲福 斉仲栄 真盛保永野 貴昭國吉 幸男
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2014 年 23 巻 3 号 p. 687-694

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抄録
要旨:【目的】われわれは急性B 型解離の合併症に対する治療方針として,1)大動脈本幹への外科治療はthoracic endovascular aneurysm repair (TEVAR)を,また2)分枝閉塞による腸管虚血の合併症にはOpen surgery を第一選択としている.また,慢性期の手術適応は瘤径60 mm 以上としており,腹部分枝再建を要する胸腹部大動脈はOpen surgery を,腹腔動脈直上までの症例はTEVAR を選択する方針としている.当科におけるB 型解離手術症例について検討した.【対象および方法】過去25 年間に当科で経験した急性B 型解離は132 例であった.うち,21 例(15.9%)が合併症のため急性期に緊急手術を要した.一方,慢性期の手術症例は67 例(59.8%)であった.手術までの期間は発症後平均3.4±5.4 年(中央値1 年)であった.【結果】急性期手術症例の手術死亡は21 例中7 例(33.3%)と不良であった.急性期の瘤破裂に対してはOpen surgery で救命し得たのは3 例中1 例のみであったが,TEVAR を行った2 例は救命退院できた.急性期腹部臓器虚血症例の手術死亡は9 例中3 例(33.3%)で,虚血要因別では明らかに分枝閉塞例で予後は不良であった(p=0.02).術前血液ガス分析におけるアシドーシスおよび乳酸値に生存例と死亡例において有意差は認めず,有意差を認めたのは手術までの時間(生存;8.6±2.3 時間,死亡;23.3±10.6 時間)のみであった(p=0.01).慢性期手術症例のOpen surgery 手術死亡は3 例(8.8%)で, TEVAR 症例では術中解離進展によりOpen conversion した1 例(3.0%)を失った.慢性期外科治療はいずれの方法でも比較的良好な結果を得た.【結論】B 型大動脈解離に対する手術成績の向上には,急性期合併症に対する手術治療の改善が肝要である.破裂例に対してはTEVAR が低侵襲で救命が可能であり,第一選択とすべきであると考えられた.また,分枝閉塞による臓器虚血に対しては,発症後24 時間以内の可及的早期の血行再建がその予後を決定することが示唆された.
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