抄録
要旨:症例は73 歳男性.腰背部痛のため歩行困難となり,前医CT で腹部分枝レベルに分葉状に膨隆する胸腹部大動脈瘤と椎体(T12-L1)の骨破壊像を認めた.持続する発熱もあり,脊椎炎を契機に発症したと考えられる大動脈瘤と考えたが,起因菌は不明であった.抗生剤投与を開始し,第11 病日に腹部正中切開で腹部人工血管置換術および腹部分枝再建を伴うステントグラフト治療を施行.術後32 日目に脳神経外科にて自家腓骨を用いた脊椎前方再建および後方固定術が施行された.椎間板および椎体より採取した感染組織からは起因菌は同定されず,摘出脊椎の病理結果でも明らかな悪性所見は認めなかった.術後はリハビリを行い,介助で立位が可能になった.初回手術後76 日目に紹介元病院にリハビリ転院となった.術後1 年が経過したが,感染の再燃は認めず,施設入所中である.