抄録
要旨:慢性骨盤痛および非典型的な下肢静脈瘤を主訴とする2 症例に対して,骨盤内鬱滞症候群の診断にて卵巣静脈塞栓術を施行した.いずれの症例も長年の慢性骨盤痛に苦しんでおり,陰部から臀部,大腿背側に静脈瘤を認めた.その症状,臨床所見から骨盤内鬱滞症候群を疑い造影CT を施行したところ著明に拡張した左卵巣静脈および骨盤内静脈瘤を認めた.確定診断,治療を目的に静脈造影を施行した.両側卵巣静脈および内腸骨静脈を半立位にて造影すると,いずれの症例でも左卵巣静脈のみに静脈不全に伴う逆流と拡張を認めた.両症例とも左卵巣静脈に対してコイル塞栓を行い症状改善が得られた.骨盤内鬱滞症候群は治療可能な疾患であり,その病態生理と治療につき婦人科医のみならず血管外科医も知っておく必要があると考えられたので報告する.