抄録
要旨:症例は60 歳の男性.胸背部の激痛のため当院へ救急搬送された.初診時CT ではDeBakey IIIB 型大動脈解離を認め,上腸管膜動脈(SMA)は真腔から供血されていたが起始部は偽腔による圧迫で狭搾していた.腸管虚血により蠕動低下が遷延し呼吸状態も増悪したため3 日目にステントグラフト内挿術を行い,プライマリー・エントリー(PE)を被覆した.術中造影ではPE から偽腔への血流が消失し,SMAの血流が改善した.術後6 日間の人工呼吸器管理を要したが,8 病日目より経口摂取を開始しえた.偽腔血圧を低下させたことが腸管血流改善と全身状態の改善に寄与したと考えられた.