日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
23 巻, 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 林 忍, 渋谷 慎太郎, 大久保 博世, 市野瀬 剛, 下河原 達也, 長島 敦, 尾原 秀明, 北川 雄光
    2014 年 23 巻 5 号 p. 831-835
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/06/05
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:【目的】下肢静脈瘤にはさまざまな愁訴があるが,そのなかでも浮腫を訴える患者は少なくなく,QOL 低下を招く一因となっている.浮腫を伴う下肢静脈瘤患者を対象とし,水分代謝調節作用を有する漢方薬である五苓散(ごれいさん)の臨床的有用性について検討した.【方法】自覚的に浮腫を伴う(CEAP 分類C3 以上)下肢静脈瘤患者22 例に対し,弾性ストッキングに併用して五苓散を12 週間投与した.五苓散投与前後で下肢周囲径(膝蓋骨上周囲径,下腿最大周囲径,外踝周囲径),自覚症状(浮腫,痛み,冷え,倦怠感,しびれ,瘙痒感,こむら返り)Visual Analogue Scale(VAS),静脈瘤重症度および臨床検査値(凝固系,炎症反応,一般,血圧)の評価を行った.【結果】五苓散投与後において下肢周囲径はいずれも有意に減少した.また,自覚症状VAS,静脈瘤重症度も有意な改善を認めた.各臨床検査値については変化を認めなかった.【結論】浮腫を伴う下肢静脈瘤の治療において,弾性ストッキングを併用し五苓散を投与することは浮腫を改善し, 患者の愁訴を軽減する可能性が示唆された.
  • 吉田 博希, 稲葉 雅史
    2014 年 23 巻 5 号 p. 836-840
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:【目的】静脈グラフトによる末梢バイパスは信頼性が高く,長期成績を考慮すると確実な血行再建法と考えられる.そこで当科における重症虚血肢に対する静脈グラフト末梢バイパスの治療成績について検討した.【方法】2005 年12 月より2013 年9 月までに施行した重症虚血肢に対する静脈グラフト末梢バイパス例39 例42 肢を対象とした.大伏在静脈単独で使用したsingle vein graft が23 肢(55%)で,spliced vein graft として使用したものが19 肢(45%)であった.【結果】静脈グラフト全体の累積開存率は4年で一次65%,二次90%であった.累積救肢率は4 年92%,術後生存率は4 年72%であった.大伏在静脈単独で使用できたsingle vein graft とspliced vein graft に分けて計算すると,single vein graft の一次累積開存率は4 年で86%であるのに対し,spliced vein graft では37%と不良であったが,二次累積開存率は,single vein graft 91%,spliced vein graft 89%と差はなくなった.【結論】静脈グラフトによる末梢バイパスを施行した重症虚血肢の生存率,救肢率は良好であった.spliced vein graft としても,厳重なfollow up を行い,適切なrevision を追加すればsingle vein graft と遜色のない成績が期待できる.
症例
  • 佐藤 博紀, 曽我部 長徳, 橋本 好平, 山本 澄治, 井野川 英利, 白川 和豊
    2014 年 23 巻 5 号 p. 841-844
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/05/22
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:膝窩動脈外膜囊腫は膝窩動脈の外膜内に発生した囊腫により動脈内腔が狭窄を来し,下肢虚血症状を引き起こす稀な疾患である.今回われわれは膝関節と囊腫の間の瘻孔形成が原因と考えられた膝窩動脈外膜囊腫の1 例を経験したので報告する.症例は71 歳,男性.左下肢の間歇性跛行を主訴に当院を受診した.左下肢のankle brachial pressure index は0.53 と低下しており,MRA では左膝上部の膝窩動脈は高度に狭窄していた.動脈硬化などによる狭窄を疑い,バルーン拡張術を行ったが,早期に症状の再燃と再狭窄を来した.造影CT で狭窄部周囲に囊胞形成を疑う所見を認めたことから膝窩動脈外膜囊腫を疑い手術を施行した.術中に囊腫と膝関節の間の瘻孔形成を認めたため,瘻孔の結紮切離,囊腫部を含めた膝窩動脈の切除および大伏在静脈による血行再建術を行った.外膜囊腫の原因が明らかでない現段階では,再発を防ぐため,関節との瘻孔形成に注意する必要があると思われた.
  • 平本 明徳, 星野 竜, 金子 完, 小柳 俊哉
    2014 年 23 巻 5 号 p. 845-849
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/05/22
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は71 歳男性.交通事故にて他院より救急搬送された.来院時,激しい腹痛を訴えていたためCT 検査を行ったところ,遠位弓部大動脈損傷と腹腔内遊離ガス像を認めた.大動脈損傷部は仮性瘤様であり,急性期の破裂を回避するため緊急手術の適応と判断し,腹部に関しては,腸管穿孔による腹膜炎の増悪を考え,胸部同様,緊急手術の適応と判断し,胸部と腹部の同時手術を行う方針とした.手術はまず,左開胸,部分体外循環下にて遠位弓部人工血管置換術を行い,閉胸後,仰臥位にて開腹し小腸部分切除を行った.術後,気管切開や創部処置などが必要となったが,後遺症なく独歩退院した.外傷性大動脈損傷においては,多臓器損傷を生じていることが多く,治療方針と時期の決定は困難な場合がある.今回,外傷性大動脈損傷と腸管損傷の併発例に対し,同時手術を行い良好な結果を得た.
  • 川崎 正和, 石橋 義光, 森本 清貴, 國重 英之, 井上 望
    2014 年 23 巻 5 号 p. 850-854
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/05/22
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は慢性腎不全にて血液透析施行中の81 歳男性で,肺炎にて当院内科紹介入院.CT にて右胸腔内に大きく蛇行する胸部下行大動脈瘤,両側総・内腸骨動脈瘤(左側は血栓閉塞)を認めた.肺炎改善後にY-graft をIMA 分岐部末梢側の腹部大動脈に吻合し,脚からのアクセスにて胸部下行大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術施行.なおY-graft 右脚は右外腸骨動脈,左脚は左大腿動脈に吻合して右内腸骨動脈への血流を温存した.約2 カ月後に右大腿動脈からのアクセスにて右内腸骨動脈へのコイル塞栓術を施行後,Y-graft 右脚から右外腸骨動脈にかけてステントグラフトを留置し,右総・内腸骨動脈瘤への血流を遮断した.術後対麻痺,腸管虚血を併発することなく,CT 上endoleak およびmigration を認めなかった.胸部,腹部重複動脈瘤症例においては術後対麻痺,腸管虚血を予防するための治療戦略を立てることが重要である.
  • 川崎 正和, 石橋 義光, 森本 清貴, 國重 英之, 井上 望
    2014 年 23 巻 5 号 p. 855-859
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/05/22
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:孤立性外腸骨動脈真性瘤破裂は極めて稀な疾患で,過去に症例報告はほとんど見受けられない.今回この極めて稀な疾患に対して手術を施行し救命し得た症例を経験したので報告する.症例は53歳男性.突然左鼠径部から大腿部の激痛,しびれ感が出現し,当院救急外来へ搬送される.CT にて最大短径70 mm 大の左外腸骨動脈瘤破裂を認め,緊急で瘤切除および人工血管置換術を施行した.術後腸管運動の回復に時間を要したが,術後9 病日目に食事摂取開始.その後の経過は順調で,術後16 病日目に自宅退院となった.動脈瘤壁の病理組織学的所見でエラスチカ・マッソン染色法にて弾性線維の欠損を認めた.本症は家族歴・臨床検査所見・身体所見および病理組織学的所見から判断して,粥状動脈硬化症によるものと診断した.術後約2 年目に急性グラフト閉塞に対して緊急で血栓摘出術を施行したが,術後3年目のCT においてグラフトは開存し,吻合部も問題なかった
  • 山崎 真敬, 蜂谷 貴, 花井 信, 田口 真吾, 小野口 勝久, 佐々木 達海
    2014 年 23 巻 5 号 p. 860-864
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:瘤内の血栓形成により生じた慢性消費性凝固障害を合併した腹部大動脈瘤の2 例を経験した.症例1 は78 歳男性で,右下腿の筋内血腫を呈し来院され,70 mm 大の腹部大動脈瘤および76 mm 大の右総腸骨動脈瘤を認めた.症例2 は76 歳男性で,76 mm 大の腹部大動脈瘤を認め,左側胸腹部に広範な皮下出血と左小脳出血を伴っていた.両症例とも血小板数低下と凝固線溶異常を認め慢性消費性凝固障害によるDIC と診断し,抗凝固療法を開始した.症例1 は入院後22 日目に人工血管置換術を施行し,経過は良好であった.症例2 は入院後38 日目にステントグラフト内挿術を施行したが,内挿後,瘤内の血栓形成が急速に生じたためと考えられる消費性凝固障害を認め術後出血に難渋した.術前より消費性凝固障害を認める場合,ステントグラフト内挿術は術後の凝固障害が人工血管置換術よりも強く現れる可能性が考えられたので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 黒田 陽介, 伊藤 寿朗, 安田 尚美, 小柳 哲也, 樋上 哲哉
    2014 年 23 巻 5 号 p. 865-868
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:近年,腹部動脈瘤破裂症例にもステントグラフト治療(EVAR)が応用され,開腹による人工血管置換術よりも死亡率が低く有用であるという報告もされつつある.当院でも,症例により動脈瘤破裂に対して緊急EVAR を施行しているが,今回,術後遠隔期に仮性動脈瘤切迫破裂をきたした1 例を経験したので報告する.症例は86 歳男性,腹部大動脈瘤破裂に対し緊急EVAR を施行し,フォローのCT で明らかなendoleak は認めなかった.術後1 年9 カ月目に腰痛を主訴に緊急搬送となり,CT 上,仮性動脈瘤の急速な拡大を認め,切迫破裂の診断にて緊急手術となった.手術は開腹にて動脈瘤を切開し,右第4 腰動脈からの出血を認めたために,瘤外側より動脈を結紮した.動脈瘤破裂症例に対するEVAR 治療は,破裂部位は血管の外膜が破綻されているため容易に仮性動脈瘤を形成する可能性があり,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 籠島 彰人, 高橋 昌一, 片田 芳明, 近藤 俊一
    2014 年 23 巻 5 号 p. 869-873
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は79 歳女性.上行弓部大動脈瘤,心房細動に対して弓部大動脈置換術およびメイズ手術を施行された.その2 年後に,拡大傾向にあった遠位弓部大動脈瘤および下行胸部大動脈瘤に対してステントグラフト留置術が施行された.退院後のCT で,気管支動脈からと思われるtype II エンドリークと,それに伴う瘤径の拡大を認めた.定期的なCT にて慎重に経過観察とされたが,およそ1 年後に食道の圧排による通過障害も出現してきたため,可及的早期の治療を要するものと考えられた.全身状態が不良であり,観血的治療を行うのは困難であると判断され,直接穿刺による塞栓術を行う方針となった.塞栓術は,cone beam CT 撮影によるCT like imaging ガイド下に局所麻酔下で行った.合併症なく手技を終了し,術後18 日目に退院となった.退院半年後のCT では,エンドリークの消失が確認され,瘤の縮小がみられた.
  • 榊原 昌志, 澤崎 直規, 東島 由一郎, 谷村 葉子, 小林 真一郎, 藤井 孝之
    2014 年 23 巻 5 号 p. 874-877
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は93 歳女性.慢性心房細動の既往がある.突然の左上肢の脱力,疼痛,痺れを主訴に救急搬送された.左上肢に冷感,チアノーゼを認め,造影CT で左鎖骨下動脈の造影不良を認め,塞栓症による急性動脈閉塞症と診断した.左上腕動脈よりバルーンカテーテルによる塞栓除去術を施行したが,術中に意識レベルが低下,下顎呼吸,除脳硬直をきたした.頭部MRI で橋,小脳,両視床に梗塞巣を,MRA で脳底動脈の描出不良を認め,脳幹梗塞と診断した.有効な治療法がなく,術後約10 時間後に死亡した.一般に塞栓症による上肢の急性動脈閉塞はバルーンカテーテルによる塞栓除去術で予後良好と考えられているが,今回われわれは,塞栓除去術により脳幹梗塞を合併し死亡した症例を経験したので報告する.
  • 伊藤 聡彦, 勝又 千英子, 渡邊 正純
    2014 年 23 巻 5 号 p. 878-881
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:近年本邦でも深部静脈血栓症(DVT)に続発する肺塞栓症(PE)症例の増加を認めているが,奇異性塞栓症の報告は稀である.症例は47 歳男性.呼吸苦を主訴に当院を受診.著明な低酸素血症を伴う頻脈,血圧低下,右下腿の浮腫を認めた.CT では両側主肺動脈の血栓症と右膝窩静脈の血栓像を認めた.心エコー上右室拡張を認め右室収縮期圧は56.4 mmHg と上昇.両心房内に血栓浮遊像を認めた.塞栓症を引き起こしうる左房内血栓とショック状態に至っている両側主肺動脈の急性肺動脈塞栓症(切迫奇異塞栓症:impending paradoxical embolism; IPE)に対して,両心房内と肺動脈の血栓摘除を施行した.左房内の血栓は開存卵円孔に右房内血栓の先端が陥入したものであった.術後血行動態および酸素化は正常化した.IPE は稀な病態であり,外科的血栓除去が予後改善につながった症例であるため文献的考察も加え報告する.
  • 齋藤 孝晶, 三岡 博, 東 茂樹
    2014 年 23 巻 5 号 p. 882-885
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は60 歳の男性.胸背部の激痛のため当院へ救急搬送された.初診時CT ではDeBakey IIIB 型大動脈解離を認め,上腸管膜動脈(SMA)は真腔から供血されていたが起始部は偽腔による圧迫で狭搾していた.腸管虚血により蠕動低下が遷延し呼吸状態も増悪したため3 日目にステントグラフト内挿術を行い,プライマリー・エントリー(PE)を被覆した.術中造影ではPE から偽腔への血流が消失し,SMAの血流が改善した.術後6 日間の人工呼吸器管理を要したが,8 病日目より経口摂取を開始しえた.偽腔血圧を低下させたことが腸管血流改善と全身状態の改善に寄与したと考えられた.
  • 渡邊 晃佑, 菅野 惠, 緑川 博文, 髙野 隆志, 植野 恭平, 滝浪 学
    2014 年 23 巻 5 号 p. 886-889
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/25
    [早期公開] 公開日: 2014/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は67 歳男性,2007 年に腹部大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術(EVAR)を施行,術後6 年に内腸骨動脈閉鎖し右総腸骨動脈瘤に対し追加EVAR を施行した.その後左総腸骨動脈瘤を発症し,術後腸管虚血予防目的に左外腸骨動脈-内腸骨動脈バイパス術を併用した追加EVAR を施行した.今後EVAR 施行後遠隔期における総腸骨動脈が拡張する合併症に遭遇する機会が増えることが予想され,虚血性腸炎を考慮した術式など,検討する必要があると考えられた.
座長総括
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