抄録
要旨:脳出血発症急性期に合併した急性大動脈解離に対する手術例は極めて稀である.症例は65 歳男性で,右半身麻痺と失語の精査で脳出血(左視床出血)を指摘された.全身検索で,胸部CT 上60 mm を超える上行大動脈の拡大と,entry が上行大動脈のULP 型大動脈解離を認めた.画像所見等から大動脈解離発症は,脳出血発症と同時期と思われたが,可及的早期に手術介入の必要があった.脳出血発症後,降圧安静療法を経て第15 病日に循環停止下に上行大動脈人工血管置換術施行した.脳出血後の脳損傷を考慮し,high flow の恐れのある脳分離体外循環は回避した.術後経過は良好で,神経症状の増悪やCT での脳出血範囲の拡大を認めず,術後2 週間で脳神経外科へ転科となった.脳出血発症急性期に合併した急性大動脈解離に対し手術介入時期に苦慮したが,脳出血発症後第15 病日で上行大動脈置換術を施行し良好な結果を得た.