日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
上腸間膜動脈狭窄に伴うリオラン弓の破裂に対して待機的に静脈グラフトでのバイパスを行った1 例
小泉 滋樹小山 忠明上田 浩之小林 裕之
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 25 巻 p. 189-192

詳細
抄録
要旨:腹部内臓動脈瘤およびその破裂は稀な疾患であるが,致死的であり重要である.リオラン弓は腸間膜内を走行する上腸間膜動脈(SMA)と下腸間膜動脈(IMA)をつなぐ側副血行路である.IMA の動脈瘤は腹部内臓動脈瘤の中でも珍しく,さらにその分枝であるリオラン弓が破裂したという報告例はない.症例は73 歳女性.救急外来を受診し,SMA の狭窄に伴うリオラン弓動脈瘤の破裂による腹腔内出血と診断された.当科受診時にはバイタルサインは安定しており,活動性出血,腸管硬塞を認めなかったことから保存的に加療を行った.破綻したリオラン弓は血栓閉塞し自然消退し,食事再開にても腹部症状の出現はなく,独歩退院後に待機的に総腸骨動脈-SMA バイパスを施行した.本症例の様に小血管の破綻による腹腔内出血では自然止血され,さらに腹部内臓動脈の豊富な側副血行路の存在から腸管虚血を起こすことなく保存的加療で軽快する場合がある.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top