抄録
要旨:患者は70 歳の男性.下行大動脈瘤に対して二度の胸部ステントグラフト治療(TEVAR)と弓部大動脈置換術の既往がある.今回,発熱と血痰を主訴に当院を受診し,CT にてステントグラフト周囲の空気像を認め,ステントグラフト感染の診断で入院となった.食道内視鏡検査にて,大動脈瘤と接する下部食道内腔に,炎症性ポリープと瘻孔を疑う所見を認め,大動脈食道瘻を疑い手術を施行した.術中,炎症性ポリープを認めた食道は菲薄化していたが,大動脈食道瘻は確認できず,大動脈肺瘻のみ認めた.手術はステントグラフト抜去および下行大動脈置換術と,大網充填術を施行した.術後食道内視鏡検査にて炎症性ポリープは消退し,同部位に瘢痕組織を認めた.炎症性ポリープが大動脈瘤と接する食道内腔にあり,大動脈瘤の切除後に消退したことなどから,炎症性ポリープは大動脈瘤が原因と考えられ,大動脈食道瘻が形成される過程であった可能性が考えられた.