2017 年 26 巻 4 号 p. 217-220
日常の診療において下肢の腫脹はよく見かけるが,股関節から発生したガングリオンによる外腸骨静脈圧排が原因であった稀な症例を経験した.症例は64歳,男性.左下肢の腫脹,疼痛を主訴に近医を受診し,エコー検査にて腸骨静脈の高度狭窄を指摘されたため当院へ紹介された.造影CT検査にて左後腹膜腔に左外腸骨静脈を外側より圧排する約2.5 cm大の囊胞性腫瘤を認めた.エコーガイド下に穿刺吸引を行い症状は改善したが,6日後には再度同様の所見となっていたため切除術の適応と判断し,手術を施行した.病理検査にてガングリオンと診断された.穿刺吸引は再発率が高く摘出術が推奨されるが,同様の症状を呈する異なる原因疾患も報告されており,手術時には注意を要すると考えられた.