2018 年 27 巻 3 号 p. 247-250
解離性大動脈瘤が原因の播種性血管内凝固症候群(DIC)は稀であるが,出血した場合,治療に難渋することが多い.症例は79歳の女性.DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤に対して,胸部下行大動脈置換術後の外来経過観察中,穿刺部からの止血困難などの症状出現と血液検査でDICの悪化を認めたため入院加療の方針となった.ヘパリン投与により血液検査上DICの改善を認めていたが,突然右大胸筋内の出血が出現した.ドレナージ止血術を行った後も持続的な出血が続いたために,凝固第13因子(FXIII/13)製剤を投与したところ,止血とDICの改善を認めた.後日出血時に採取した血液検査にて,FXIII/13が46%と低値であったことが判明した.解離性大動脈瘤に合併するDICの症例で出血を認め,その背景にFXIII/13の低下が関与し,治療にはFXIII/13製剤が有効であった症例を報告した.