2018 年 27 巻 4 号 p. 267-272
【目的】重症下肢虚血に対する静脈グラフトを用いた遠位バイパスは長期開存という面で優れている.しかしながらグラフトの狭窄により,遠隔期に開存が得られない症例もある.今回遠位バイパス術後のグラフト狭窄に対する血管内治療の成績を検討した.【方法】2009年4月から2016年10月まで当院で静脈グラフトを用いて施行した遠位バイパス術315グラフトのうち,遠隔期にグラフトに対して血管内治療を施行した50グラフト(17%)を対象とした.【結果】血管内治療は2.5~3.0 mmのバルーンを使用して,低圧,長時間拡張を行った.初回手技成功は48グラフト(96%,2グラフトは過拡張によりグラフト破綻)であった.平均観察期間は42カ月,1グラフトあたりの平均血管内治療回数は1.9回であった.遠隔期に10例でグラフト閉塞し,2次開存率は1年84%,3年77%であった.大切断回避率は3年95%であった.【結論】遠位バイパス術後のグラフト狭窄に対する血管内治療の成績は良好であった.グラフトへの血管内治療は外科的な再血行再建術以外のオプションとなる可能性がある.