2018 年 27 巻 5 号 p. 417-421
骨髄増殖性腫瘍である本態性血小板血症では血小板数増加に伴う血栓症が危惧される.今回,本態性血小板血症を合併した下肢慢性動脈閉塞症に対する急性動脈閉塞に対し,繰り返し血行再建を行うことで救肢に成功した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は54歳,男性.43歳時,本態性血小板血症治療薬による血小板数コントロール後に右総大腿–後脛骨動脈バイパスおよび大腿深動脈血栓内膜摘除術を施行した.3年後,左腸骨動脈内ステント留置術および左大腿–膝下膝窩動脈バイパス術を施行した.以後,末梢動脈やグラフトの血栓塞栓によって急性左下肢動脈閉塞を複数回生じ,血栓除去や追加バイパス術を計5回行った.薬剤での血小板数コントロール,抗血小板薬・抗凝固薬の内服,定期下肢血流評価および虚血症状出現時の迅速な対応により,現在も救肢を維持し,今後も慎重な経過観察を行う予定である.