日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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27 巻 , 5 号
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総説
  • 森下 清文
    2018 年 27 巻 5 号 p. 385-391
    発行日: 2018/10/19
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル フリー

    弓部大動脈ステントグラフト留置術(HAAR)は技術的に1. debranching, 2. 開窓術,3. parallel graft technique, 4. 枝付きグラフトに大別できる.本稿ではこれらの技術の現状を文献的に概説し,あわせて自験例の成績からHAARの現状ならびに今後の展望を述べたい.2009年1月から2017年末までに当科で施行したHAARは172例であった.早期死亡を5例(3%)に認めた.合併症は脳梗塞7例(4%),呼吸不全5例(3%),大動脈解離3例,不全対麻痺2例であった.Type I endoleakは29例(17%)に認め,遠隔期に再TEVARを必要とした症例が17例(10%)あった.遠隔死亡56例中9例(5%)は瘤関連死亡であった.以上よりHAARの現在の適応は高齢者もしくは人工血管置換術の危険性の高い患者である.ただしdeviceの改良により遠隔期合併症が現在より減少する可能性は十分にある.

  • 森景 則保, 濱野 公一
    2018 年 27 巻 5 号 p. 405-411
    発行日: 2018/10/29
    公開日: 2018/10/26
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈瘤に対するステントグラフト手術(EVAR)は人工血管置換術(OSR)と並んで標準治療となり,急速に普及している.EVAR導入当初からすると格段に技術的進歩が見られる.EVARが不適とされるhostile neck,アクセスルート不良や破裂性においても技術的工夫によりEVARが可能になりつつある.しかし,EVARの長期成績に関しては追加治療を含めて問題点はある.本邦における長期成績は明確ではないが,欧米からの多施設ランダム化試験(RCT)では長期での追加治療回避率や瘤関連死亡はOSRに劣るという報告がされた.同RCTが旧世代の機種の使用であることや手技的な相違点もあり,必ずしも本邦のEVARに合致するとは限らないが,重要な警告と受け止めるべきである.EVARの長期成績を向上するためにはtype IIエンドリークへの対応も今後の課題である.より多くの腹部大動脈瘤患者が低侵襲治療であるEVARの恩恵を得られるためには,技術的進歩を追求することと,長期成績を担保するための取り組みの両者が必要であり,いずれも欠けてはならない.

症例
  • 洞井 和彦, 鄒 貴光, 吉良 浩勝, 曽我 欣治
    2018 年 27 巻 5 号 p. 347-350
    発行日: 2018/09/11
    公開日: 2018/09/08
    ジャーナル フリー

    大腿深動脈瘤破裂はまれな疾患であり,その治療方針については議論の余地がある.今回筆者らは,本疾患に対する手術症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.症例は80歳,男性.2年前に両側大腿深動脈瘤と診断されていたが,この際は本人の希望で右側のみの手術となった.今回は,突然の左大腿部痛が出現して,当院救急外来へ搬送された.造影CTで左大腿深動脈瘤破裂を認め,緊急手術となった.左大腿深動脈は総大腿動脈からの分岐後first branchを出した以後に巨大な血腫を伴い,瘤形成していた.浅大腿動脈以下の末梢血流は良好に描出されていたため,血行再建は行わず,動脈瘤切除術のみを施行した.術後経過は良好であり,下肢虚血などの合併症は認められなかった.また,瘤拡大(最大径20 mm以上)を認めた場合は早期に手術をすることが望ましいと思われた.

  • 山本 知則, 井上 龍也, 尾花 正裕, 林 佑樹, 井坂 晋, 山崎 滋孝
    2018 年 27 巻 5 号 p. 351-354
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    類上皮血管腫(epithelioid hemangioma)は,良性の血管腫瘍に分類される.頭頸部の皮下組織に発生することが多いが,その発生頻度は低い.末梢の大型動脈に発生することはきわめてまれである.今回われわれは,若年男性の左上腕動脈に発生した類上皮血管腫の手術例を経験したため,報告する.症例は30歳男性.左上腕屈側に腫瘤を自覚したため来院した.腫瘤は無痛性で弾性は硬であった.超音波検査では上腕動脈を取り囲む32×15 mmの楕円形腫瘤を認めた.腫瘤内部は不均一な低エコーを示し,動脈内腔に突出し可動性を有する紐状のエコー像を認めた.腫瘤は動脈も含めて一括に切除し,大伏在静脈グラフトによる置換術を行った.病理組織学検査で腫瘤は類上皮血管腫と診断された.類上皮血管腫は局所再発の可能性があるため,厳重な経過観察が必要である.

  • 在國寺 健太, 水野 明宏, 小川 辰士, 齊藤 慈円, 須田 久雄
    2018 年 27 巻 5 号 p. 355-358
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    病的肥満患者において体外循環の送血路確保は時に難渋する.患者は体重160 kgの53歳男性.Stanford A型急性大動脈解離,心タンポナーデの診断で緊急手術を施行した.気管挿管後に心停止となり,タンポナーデ解除後に心拍再開が得られたが,上行大動脈破裂による噴出性の出血を認めた.出血をコントロールしつつ経心尖部送血で体外循環を開始し,低体温循環停止下にHemi-arch人工血管置換術を施行した.術後の酸素化は極めて不良で,術後11日に経皮的気管切開キットを使用し気管切開を行った.一時的な透析を要したが透析は術後26日で離脱した.術後33日で人工呼吸器を離脱し,術後54日にリハビリ目的に転院した.現在は自宅退院し職場復帰を果たした.経心尖部送血は体格に左右されない迅速な送血路として有用であった.早期の気管切開は縦隔炎のリスクとなるが,気管切開により早期に呼吸器の離脱と離床が可能となった.

  • 三上 拓真, 伊藤 寿朗, 沼口 亮介, 渡邊 俊貴, 仲澤 順二, 川原田 修義
    2018 年 27 巻 5 号 p. 359-362
    発行日: 2018/09/29
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性.DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤に対して6年前に左鎖骨下動脈起始部末梢から第9胸椎レベルまでの胸部下行大動脈人工血管置換術が施行されていた.その際,末梢は両腔吻合され,吻合部末梢の偽腔は開存していた.外来での経過観察中,最大径66×80 mmと瘤径拡大を認めたため,Candy Plug法を用いた血管内治療を施行した.手術は胸部下行の人工血管から真腔にかけて腹腔動脈上までステントグラフトを留置し,その末梢端に合わせて偽腔にCandy Plugを展開した.合併症は認めず術後9日で退院となり,4カ月後のCTでは最大の瘤径が66×80 mmから49×69 mmと縮小し,真腔の拡大が得られた.本症例のようなDeBakey IIIb型解離性大動脈瘤で胸部下行大動脈人工血管置換術後,両腔吻合した末梢の残存解離の偽腔が拡大した症例に対してCandy Plug法を用いた血管内治療は有効と考えられた.

  • 堀 尚也, 北川 敦士, 山田 幸夫, 長尾 俊彦
    2018 年 27 巻 5 号 p. 363-366
    発行日: 2018/09/29
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.慢性腎不全に対し,右上肢動静脈シャントにて人工透析を継続するも狭窄を繰り返す.2016年2月,右鎖骨下静脈高度狭窄による静脈高血圧に対し,PTA/stent留置術を施行した.2016年12月,右上肢の腫脹が再燃,血管造影上,右鎖骨下静脈ステント閉塞と診断した.左右上腕部橈側皮静脈間に6 mm径のePTFE(expandable polytetrafluoroethylene)人工血管にて交叉バイパス術を施行.術後,右上肢静脈圧の低下と腫脹の軽減を得られたので報告する.

  • 池田 知歌子, 野田 征宏, 坪田 誠
    2018 年 27 巻 5 号 p. 367-372
    発行日: 2018/09/29
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

    症例は90歳女性.意識消失と腹痛にて救急搬送,CTで腹部大動脈瘤破裂と診断された.ショックが進行しRutherford分類レベル3と判断,緊急開腹手術を施行した.腎動脈上まで血腫進展を認めFitzgerald IIIと診断,大動脈右側壁に径20×20 mmの円形破裂孔を認めた.人工血管置換術を施行したが術中に腸管壊死が進行,菲薄化した下行結腸が穿孔した.このため一期的に左側横行結腸~S状結腸口側まで腸切除し,多量の温生食で洗浄,ドレーン留置し,人工血管周囲に大網を充填,人工肛門を造設した.術後敗血症性ショックに対しエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)+持続血液濾過透析(PMMA-CHDF)を行った.呼吸不全,腎不全から離脱し経過良好で,リハビリ目的に転院.現在ADL自立し杖歩行にて外来通院中である.90歳以上の超高齢者で腸管壊死・穿孔合併腹部大動脈瘤破裂の救命例は極めて稀と考えられ報告した.

  • 田畑 光紀, 佐藤 誠洋, 佐伯 悟三
    2018 年 27 巻 5 号 p. 373-376
    発行日: 2018/10/02
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈人工血管感染は致死的な合併症である.治療は感染人工血管摘出術が推奨されるが,侵襲が大きい.症例は65歳男性,2カ月前に両側総腸骨動脈瘤,腹部大動脈瘤に対し開腹人工血管置換術を施行した.発熱を主訴に当院受診,炎症反応上昇と造影CTで人工血管周囲の液体貯留と周囲脂肪織濃度上昇を認め,人工血管感染と診断し,抗生物質投与を開始した.入院5日目のCTで液体貯留の拡大を認め,CTガイド下で同部位を穿刺し,乳白色の膿汁を認め,ドレーン留置した.ドレナージ翌日から解熱,穿刺後7日目にドレーンを抜去した.排出された膿からはMSSAが検出された.抗生剤を内服へ切り替え,入院38日目に退院した.退院後10カ月が経過したが,再燃は認めていない.人工血管感染に対するCTガイド下ドレナージは原因菌の特定と治療を兼ね備えた低侵襲な手技であり,腹部大動脈人工血管感染の治療戦略として考慮すべき手技である.

  • 大矢 薫, 曽川 正和
    2018 年 27 巻 5 号 p. 377-380
    発行日: 2018/10/10
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    Cephalic arch stenosisを3例経験し,内2例に対し外科的修復術を行った.82歳女性と76歳男性で,いずれも右前腕に人工血管を用いてループ状にバスキュラーアクセスが造設され,人工血管が橈側皮静脈に吻合されていた.造設後それぞれ10カ月,42カ月後にcephalic arch stenosisに対する手術を行った.手術は,人工血管の静脈吻合側付近を離断し,人工血管から上腕尺側皮静脈に新たな人工血管を用いて血行路変更を行うtransposition法を行った.術後,透析時の返血圧が低下し,上腕動脈の血流量も増加し,血管抵抗指数も低下した.外科的治療は,さまざまな方法が報告されているが,より末梢で行うtransposition法は,中枢側の静脈を温存しているため,今後バスキュラーアクセス合併症が生じた際に,温存されている中枢側で再建できる可能性があるため有用と考えられた.

  • 小林 太, 白谷 卓, 坂口 祐紀, 宮坂 成人
    2018 年 27 巻 5 号 p. 381-384
    発行日: 2018/10/19
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代男性.4年前腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行された.下腸間膜動脈(IMA)と腰動脈に由来したtype II endoleakが認められていたため,計4回の血管内コイル塞栓術を施行したがendoleakは残存していた.著明な多発囊胞腎,肝囊胞を合併しており開腹手術は極めて困難であったため経過観察としていたが,破裂を来たし救命目的に手術を行った.瘤を切開しendoleakの原因である腰動脈からの出血を確認した後縫合止血した.術操作中にステントグラフト右脚が抜けたため,下行大動脈に留置した血流遮断バルーンで出血をコントロールした.留置されていたステントグラフトは温存し,ステントグラフト両脚にそれぞれ新たな人工血管を吻合することにより再建した.EVAR術後の破裂症例は時に救命が困難となるが術式を考慮し救命し得たため報告する.

  • 新里 稔, 浦中 康子, 笠間 啓一郎, 軽部 義久, 内田 敬二, 益田 宗孝
    2018 年 27 巻 5 号 p. 393-397
    発行日: 2018/10/29
    公開日: 2018/10/26
    ジャーナル フリー

    下部消化管への動脈腸管瘻は稀な疾患で早期診断が難しく,感染を併発しやすいことから予後不良である.近年内腸骨動脈瘤破裂に対する血管内治療が報告されているが,出血コントロールが困難な場合もあり,かつ下部消化管瘻では感染が問題となる.症例は88歳,男性.下血を主訴に来院し,右内腸骨動脈瘤破裂,直腸穿破の診断で緊急手術を行った.右内腸骨動脈根部を遮断して瘤を切開,中枢側を縫合閉鎖し,瘤内の血栓を除去,分枝血管を縫合止血,瘤壁を縫合した.直腸との瘻孔の処置は行わず,横行結腸で双孔式人工肛門造設,直腸膀胱窩ドレーンを留置した.術後下血を認めず,注腸造影後にドレーンを抜去した.術後感染徴候はなく,介助で歩行可能な状態まで改善し,回復期リハビリテーション病院へ転院した.動脈瘤切除,人工肛門造設術で救命しえた一例を経験したので文献的考察を含め報告する.

  • 寺田 仁, 鈴木 卓康, 深田 睦
    2018 年 27 巻 5 号 p. 399-403
    発行日: 2018/10/29
    公開日: 2018/10/26
    ジャーナル フリー

    症例は78歳男性.下腿の疼痛,しびれを主訴に当院受診した.CT,血管造影では腎動脈下腹部大動脈から両側膝窩動脈までびまん性動脈拡大を伴う多発動脈瘤病変を認め,左浅大腿動脈から膝窩動脈にかけて閉塞していることにより重症虚血肢に陥っていた.分割手術の方針とし,まず左重症虚血肢に対する治療として左腸骨動脈から大腿深動脈まで人工血管を用いて置換し,さらに大腿深動脈から膝下膝窩動脈まで大伏在静脈を用いてバイパスを作成した.続いて2期目の手術として腹部大動脈から両側外腸骨動脈,左内腸骨動脈を人工血管にて置換し下腸間膜動脈は再建した.3期目に右浅大腿動脈から膝上膝窩動脈までを人工血管にて置換した.術後経過は良好でCTでも再建した部位は良好に開存していた.本症例はこれまでに報告されてきたarteriomegalyやaneurysmosisに含まれる疾患と考えられた.

  • 今釜 逸美, 荒田 憲一, 牛島 孝, 井本 浩
    2018 年 27 巻 5 号 p. 417-421
    発行日: 2018/10/29
    公開日: 2018/10/26
    ジャーナル フリー

    骨髄増殖性腫瘍である本態性血小板血症では血小板数増加に伴う血栓症が危惧される.今回,本態性血小板血症を合併した下肢慢性動脈閉塞症に対する急性動脈閉塞に対し,繰り返し血行再建を行うことで救肢に成功した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は54歳,男性.43歳時,本態性血小板血症治療薬による血小板数コントロール後に右総大腿–後脛骨動脈バイパスおよび大腿深動脈血栓内膜摘除術を施行した.3年後,左腸骨動脈内ステント留置術および左大腿–膝下膝窩動脈バイパス術を施行した.以後,末梢動脈やグラフトの血栓塞栓によって急性左下肢動脈閉塞を複数回生じ,血栓除去や追加バイパス術を計5回行った.薬剤での血小板数コントロール,抗血小板薬・抗凝固薬の内服,定期下肢血流評価および虚血症状出現時の迅速な対応により,現在も救肢を維持し,今後も慎重な経過観察を行う予定である.

  • 出津 明仁, 松下 昌裕
    2018 年 27 巻 5 号 p. 423-428
    発行日: 2018/10/29
    公開日: 2018/10/26
    ジャーナル フリー

    胃の手術後にMRSA敗血症による感染性腹部大動脈瘤を発症し,切迫破裂のためステントグラフト内挿術(EVAR)を受けたもののMRSA感染が遷延し,保存的治療で制御できないため,非解剖学的再建,ステントグラフト(SG)抜去を行い,治癒し得た症例を経験したので報告する.症例は82歳,男性.胃GIST(Gastrointestinal stromal tumor)再発に対する残胃全摘術後に腹部大動脈瘤切迫破裂となり,腎動脈上固定型SGによるEVARを受けた.血液培養でMRSAが検出されたため,抗菌薬治療,膿瘍ドレナージを行ったが感染を制御することはできず,EVARの29カ月後にSG感染に対して非解剖学的再建,SG抜去を行った.腹腔動脈上で大動脈を遮断し,腎動脈上固定用のトップステントをワイヤーカッターで切離して,遺残なくSGを除去した.感染SG抜去手術後28カ月時点では感染の再燃を認めていない.

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