弓部大動脈ステントグラフト留置術(HAAR)は技術的に1. debranching, 2. 開窓術,3. parallel graft technique, 4. 枝付きグラフトに大別できる.本稿ではこれらの技術の現状を文献的に概説し,あわせて自験例の成績からHAARの現状ならびに今後の展望を述べたい.2009年1月から2017年末までに当科で施行したHAARは172例であった.早期死亡を5例(3%)に認めた.合併症は脳梗塞7例(4%),呼吸不全5例(3%),大動脈解離3例,不全対麻痺2例であった.Type I endoleakは29例(17%)に認め,遠隔期に再TEVARを必要とした症例が17例(10%)あった.遠隔死亡56例中9例(5%)は瘤関連死亡であった.以上よりHAARの現在の適応は高齢者もしくは人工血管置換術の危険性の高い患者である.ただしdeviceの改良により遠隔期合併症が現在より減少する可能性は十分にある.
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