日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
急性期の孤立性上腸間膜動脈解離に対して初期治療としての抗凝固,抗血小板薬を使用しない保存的治療の有用性
河野 智 朴 昌禧武田 崇秀
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 28 巻 1 号 p. 91-94

詳細
抄録

孤立性上腸間膜動脈解離(ISMAD)は比較的稀な疾患である.未だ発生機序やリスク因子も不明で治療方法も確立していない.われわれは2015年1月より2018年5月まで本院の急性期のISMAD連続10症例を対象とし,手術治療への転換も考慮し,初期治療として抗凝固薬も抗血小板薬も使用せず絶食,補液の保存的治療を行った.全例,腹痛で発症していた.治療方針は入院拒否の1例を除き,入院し保存的療法を行った.全症例において治療開始後平均2.3(1~8)日間で症状は消失した.経過観察中に造影コンピューター断層撮影検査を行った7例中6例(85.7%)が真腔狭小化している部分の改善を認め,全症例血管径拡大も認めなかった.平均観察期間は1.88(0.2~3.6)年で,この間の追加手術例も死亡例もなかった.抗凝固薬も抗血小板薬も使用しない保存的治療は急性期ISMADの初期治療として有用性があると考えられた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top