2019 年 28 巻 1 号 p. 29-33
左鎖骨下動脈(LSA)の温存が必要な弓部大動脈瘤の治療はzone 2経カテーテル的胸部大動脈瘤手術(TEVAR)にChimney法(C法)を併用する場合がある.C法のgraftは通常中枢側へ向け留置するため,メインのstent-graft(SG)とのオーバーラップが短くガターリークを残すことが懸念される.今回われわれは上記欠点を補い得る,C法のgraftを末梢側へ向け留置するperiscope endograft(PG)法を行ったので報告する.症例は76歳男性,嗄声を主訴に耳鼻科受診し,CT検査で最大径65 mmの弓部大動脈瘤を認め紹介された.LSA直後より瘤化し,左前胸壁側へ突出する囊状瘤でblisterの付属を認め,破裂の危険性高く早期治療を必要とした.低侵襲な治療を希望されたため,PG法併施のzone 2 TEVARを検討した.術後経過は良好で,CT検査でendoleak(EL)など問題を認めなかった.本邦におけるPG法の報告は少なく,graftにヘパリン使用中心循環系ステントグラフト(VIABAHN)を使用した報告例は検索し得なかった.PG法併施のTEVARを低侵襲に行え,緊急対応も可能な方法と考えられた.