日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
28 巻 , 1 号
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総説
  • 金岡 祐司, 大木 隆生
    2019 年 28 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2019/02/21
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療は腹部分枝の血流維持が必要で通常のステントグラフト術では対応できない.そのため,治療時にさまざまなデバイス,工夫が必要である.ここでは胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の現状,対麻痺を含めた初期成績,そして中期成績をまとめて報告する.

  • 工藤 敏文
    2019 年 28 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2019/02/26
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈瘤に対する外科治療(瘤切除,人工血管置換術)は標準術式であるが,合併症の予防は重要である.術後のS状結腸・直腸の腸管虚血は,発生頻度は低いものの重篤で死亡率が高い.予防として最も重要なことは術前・術中の左半結腸および直腸の血行評価,および術中の下腸間膜動脈の血流評価である.臀筋跛行予防の観点からは,内腸骨動脈(IIA)血流が温存されることが望ましいが,経時的な観察から積極的なIIA再建の適応は低いと考えられる.勃起機能のためには,少なくとも一側の内腸骨動脈から内陰部動脈に至る順行性の血流が温存または再建されていることが重要である.逆行性射精の防止には,上下腹神経叢と腰内臓神経の一側(とくに左側),および左下腹神経を温存することが重要である.局所解剖ならびに病態生理を理解,習熟することが合併症を予防する上で重要であり,組織の損傷を防ぐために常に愛護的手術操作を心がけることを忘れてはならない.

講座
原著
  • 橋本 宗敬, 後藤 均, 赤松 大二朗, 清水 拓也, 土田 憲, 河村 圭一郎, 田島 悠太, 梅津 道久, 鈴木 峻也, 亀井 尚
    2019 年 28 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2019/01/22
    公開日: 2019/01/22
    ジャーナル フリー

    【目的】感染性腹部大動脈瘤に対して,解剖学的血行再建,大網充填術を行い,良好な長期成績を得ているので報告する.【方法】2010年から2017年に手術治療を行った感染性腹部大動脈瘤連続27症例に対し,診断,治療,予後について検討した.【結果】男性は26例,年齢中央値は69歳.臨床経過,血液検査,CT所見から総合的に感染瘤と診断した.治療は,開腹手術とし,肉眼的に感染が及んでいる大動脈壁とその周囲組織を切除し,代用血管で解剖学的血行再建,大網充填術を行った.周術期合併症を8症例(29.6%)に認めたが,周術期死亡は0,再感染例は0であった.術後中央値1147日の観察期間において,感染再発や,代用血管の感染はなく,疾患関連死亡や,手術関連死亡は認めなかった.他病死を6例に認め,術後5年生存率は76.2%であった.【結論】感染性腹部大動脈瘤に対する解剖学的血行再建術の成績は良好である.

  • 河野 智, 朴 昌禧, 武田 崇秀
    2019 年 28 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2019/02/22
    公開日: 2019/02/21
    ジャーナル フリー

    孤立性上腸間膜動脈解離(ISMAD)は比較的稀な疾患である.未だ発生機序やリスク因子も不明で治療方法も確立していない.われわれは2015年1月より2018年5月まで本院の急性期のISMAD連続10症例を対象とし,手術治療への転換も考慮し,初期治療として抗凝固薬も抗血小板薬も使用せず絶食,補液の保存的治療を行った.全例,腹痛で発症していた.治療方針は入院拒否の1例を除き,入院し保存的療法を行った.全症例において治療開始後平均2.3(1~8)日間で症状は消失した.経過観察中に造影コンピューター断層撮影検査を行った7例中6例(85.7%)が真腔狭小化している部分の改善を認め,全症例血管径拡大も認めなかった.平均観察期間は1.88(0.2~3.6)年で,この間の追加手術例も死亡例もなかった.抗凝固薬も抗血小板薬も使用しない保存的治療は急性期ISMADの初期治療として有用性があると考えられた.

症例
  • 竹内 祐貴, 西村 潤一, 深田 睦, 坂上 直子, 寺田 仁
    2019 年 28 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2019/01/22
    公開日: 2019/01/22
    ジャーナル フリー

    左鎖骨下動脈(LSA)の温存が必要な弓部大動脈瘤の治療はzone 2経カテーテル的胸部大動脈瘤手術(TEVAR)にChimney法(C法)を併用する場合がある.C法のgraftは通常中枢側へ向け留置するため,メインのstent-graft(SG)とのオーバーラップが短くガターリークを残すことが懸念される.今回われわれは上記欠点を補い得る,C法のgraftを末梢側へ向け留置するperiscope endograft(PG)法を行ったので報告する.症例は76歳男性,嗄声を主訴に耳鼻科受診し,CT検査で最大径65 mmの弓部大動脈瘤を認め紹介された.LSA直後より瘤化し,左前胸壁側へ突出する囊状瘤でblisterの付属を認め,破裂の危険性高く早期治療を必要とした.低侵襲な治療を希望されたため,PG法併施のzone 2 TEVARを検討した.術後経過は良好で,CT検査でendoleak(EL)など問題を認めなかった.本邦におけるPG法の報告は少なく,graftにヘパリン使用中心循環系ステントグラフト(VIABAHN)を使用した報告例は検索し得なかった.PG法併施のTEVARを低侵襲に行え,緊急対応も可能な方法と考えられた.

  • 宮本 智也, 平山 亮, 坂口 健, 吉岡 祐希, 上木原 健太, 鈴木 龍介
    2019 年 28 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2019/01/28
    公開日: 2019/01/25
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    腸骨静脈圧迫症候群に対する治療は血管内治療や自家大伏在静脈を用いたPalma手術,人工血管によるバイパス手術などがあるが,確立されたものはない.出血や下腿潰瘍を主訴に受診した内腸骨動静脈瘻を伴う腸骨静脈圧迫症候群の2例に対してGORE PROPATEN Vascular Graft(W. L. Gore & Associates, Inc. Flagstaff, Arizona, USA)を用いた静脈–静脈交差バイパス術を施行した.PROPATENは,ePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)のグラフト内腔にヘパリンを共有結合させて,抗血栓性に優れるとされる.動静脈瘻を維持した状態で良好な開存を維持することができ,症状は改善した.腸骨静脈圧迫症候群に対して,PROPATENを用いた静脈–静脈交差バイパス術は有効な治療方法と考えられた.

  • 林 祐次郎, 佐々木 茂, 高山 哲郎, 本間 信之, 河村 圭一郎, 赤田 徹弥
    2019 年 28 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2019/01/28
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,潜在性二分脊椎症の合併により,両側難治性足趾潰瘍を伴うBuerger病の発見が遅れた1例を経験した.症例は33歳男性,生後より潜在性二分脊椎症を指摘されていたが,経過観察されていた.30歳時,二分脊椎症が原因と思われる足趾潰瘍形成をみとめ,創部デブリートメント,脊髄係留解除術を施行し潰瘍は改善した.2年後,難治性足趾皮膚潰瘍の再発をみとめ,症状改善しないため当院紹介となった.重症下肢虚血の状態であり入院後下肢動脈造影検査施行し,その特徴的な所見,また身体所見よりBuerger病の診断にいたった.治療は禁煙,プロスタグランディン製剤の投与,血管新生を促がすアートアシストを用いて行った.経過は良好で,足趾圧の改善をみとめ,潰瘍の治癒を得た.二分脊椎症を合併したBuerger病はまれであるため,若干の考察を加えて報告する.

  • 千葉 清, 北 翔太, 鈴木 寛俊, 桜井 祐加, 小野 裕國, 宮入 剛
    2019 年 28 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2019/01/28
    公開日: 2019/01/25
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    症例は57歳男性.1カ月前からの腰痛精査にて見つかった腎動脈直下の囊状瘤があり精査目的にて入院した.不全型ベーチェット病にて眼科通院歴があり,軽度のCRP上昇1.1 mg/dLを認めたことからPETを施行した.明らかな異常集積を認めず,待機的手術を行った.開腹下片側腎動脈上遮断で人工血管置換術施行した.術後5日目から発熱と口腔内アフタが再燃.術後7日目に突然の意識障害が出現し,緊急MRI施行した.急性型神経型ベーチェット病の診断でステロイドパルス療法と免疫抑制剤を行い,軽快退院した.術後2年,合併症なく経過中である.

  • 奥島 久貴, 谷 裕美子, 土屋 裕一, 金山 拓亮, 橋詰 賢一
    2019 年 28 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2019/02/19
    公開日: 2019/02/16
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    人工血管の露出に対しては,新たな経路での血行再建か,露出血管を温存し創閉鎖を行うかの選択を迫られる.今回,前胸部に露出した人工血管を大胸筋弁で被覆し,創閉鎖した1例を経験したため報告する.症例は69歳女性,急性上行大動脈解離に対し,緊急で上行・弓部大動脈人工血管部分置換術,待機的に胸部大動脈ステントグラフト内挿術,右鎖骨下–左鎖骨下動脈交叉バイパス術,左鎖骨下動脈塞栓術が施行された.術後に人工血管の露出を認めた.皮膚欠損があり単純縫縮は困難であったため,創閉鎖に際しては大胸筋弁と植皮を用いた.術後半年の経過で感染兆候や再露出は認めていない.露出人工血管に対しては,一定の条件下においては温存も可能と報告されている.前胸部の人工血管露出に対し,有茎大胸筋弁による被覆は有用な手法の一つと考えられた.

  • 大谷 将之, 小田 克彦, 片平 晋太郎, 伊藤 校輝, 佐熊 勉, 長嶺 進
    2019 年 28 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2019/02/22
    公開日: 2019/02/21
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    頻回の静脈穿刺が原因と考えられた静脈性血管瘤の1例を経験したので報告する.症例は80歳,女性.多発性骨髄腫で血液内科通院中であり,頻回の採血既往がある.約10年前より右肘窩に腫瘤を認め,増大してきたため精査加療目的に当科紹介となった.CT検査で橈側皮静脈に55×33×22 mmの拡張性病変を認め,超音波検査では動静脈瘻を認めなかった.疼痛などの症状はなかったが,腫瘤の拡大傾向があること,美容的観点より本人の摘出希望があることから手術の方針となった.全身麻酔下に瘤を切除し,病理学的検索を行った.静脈壁は菲薄化しており,中膜の平滑筋,弾性線維は減少,断裂し,内膜は線維性に肥厚していた.12×10 mmの範囲で中膜から外膜にかけて不規則な毛細血管の密な増生を認め,血管腫に相当する像であった.静脈性血管瘤の病理組織学的所見で,血管腫を呈した例は本邦初である.

  • 伊藤 聡彦, 渡邊 正純, 片岡 豪, 関 晴永, 奥村 裕士
    2019 年 28 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2019/02/22
    公開日: 2019/02/21
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    上行大動脈の浮遊血栓症は稀であるが,悪性腫瘍の合併,化学療法施行に伴う血栓形成傾向がその一因となったと推察される症例を経験した.症例は61歳男性.2年前に直腸癌に対する手術を施行,術後の補充化学療法中であったが,突然のめまいと協調運動不全を発症.小脳梗塞の診断で入院となった.CT上塞栓源だと疑われる上行大動脈壁に付着する腫瘤を確認した.さらなる塞栓症の原因となると判断し緊急上行大動脈置換術を施行した.腫瘤は上行大動脈壁の動脈硬化病変に伴う潰瘍底に付着していた.病理組織上の診断は混合血栓であり,急速に形成されたものであると予想された.悪性腫瘍合併症例,化学療法施行中の症例における血栓塞栓症は知られた病態であるが,塞栓源として心腔内のみならず,大動脈内での血栓形成も念頭に入れて精査を行う必要がある.

  • 千代谷 真理, 谷口 哲, 齊藤 良明, 大徳 和之, 福田 幾夫
    2019 年 28 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2019/02/26
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    症例は30歳,男性.神経線維腫症I型に対して当院整形外科で加療中であった.CTで後腹膜腫瘍を認めていたが,徐々に増大傾向を示しPET-CTでもFDG陽性集積を認めたため,悪性転化として腫瘍切除の方針となった.腫瘍が大動脈に近接していたため,出血時の手術協力を依頼された.手術当日,大動脈からの出血に対して縫合止血を試みたが大動脈壁が非常に脆弱であり,縫合止血は困難であった.ステントグラフトを留置することで止血が得られ腫瘍を切除できたが,止血するまでの間に大量出血をきたした.神経線維腫症I型は大動脈壁の脆弱性が指摘されており,縫合止血はさらなる血管損傷につながる恐れがあり危険である.出血リスクが非常に高い疾患であることを念頭におき,手術の際には十分な準備をして臨むことが重要である.

2016年JCLIMB年次報告
  • 日本血管外科学会JCLIMB委員会, NCD JCLIMB分析チーム
    2019 年 28 巻 1 号 p. 1-27
    発行日: 2019/01/22
    公開日: 2019/01/22
    ジャーナル フリー

    2013年以降,日本血管外科学会は,我が国の血管外科医により行われている重症下肢虚血(critical limb ischemia; CLI)診療の現状を明らかにし,その結果を現場の医師に還元することで,医療の質の向上に貢献することを目的として,全国規模のCLI登録・追跡データベース事業を開始した.このデータベースは,非手術例も含むCLI患者の背景,治療内容,早期予後,および治療後5年までの遠隔期予後を登録するもので,JAPAN Critical Limb Ischemia Database(JCLIMB)と呼称し,NCD上に設置されている.2016年は91施設が1,092肢(男性755肢:70%,女性337肢)のCLIを登録し,うちASOが1,070肢(男性739肢:69%,女性331肢)で,全体の98%を占めた.この年次報告書では,登録肢の背景,虚血肢状態,治療,治療後早期(1カ月)の予後を集計し報告する.

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