日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
Stanford A型急性大動脈解離に対して腋窩動脈送血を用いた弓部大動脈置換術後に右上肢の筋腎代謝症候群をきたした1例
谷川 和好 江石 清行橋詰 浩二三浦 崇北村 哲生嶋田 隆志
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2019 年 28 巻 2 号 p. 145-148

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抄録

症例は49歳男性.176 cm, 120 kg.突然の胸背部痛を認め当院緊急搬送.造影CTでStanford A型の急性大動脈解離と診断,緊急手術となった.右腋窩動脈(direct cannulation)・右大腿動脈送血で体外循環を確立.直腸温27度で循環停止,選択的脳灌流法,open distal anastomosisで弓部大動脈置換術施行.術後CKが最高値57455 U/lと上昇,Crは術前値1.63 mg/dLから最高値4.07 mg/dLまで上昇した.術後造影CTで体幹部臓器,下肢には明らかな虚血性変化を認めないが,術直後より右上肢の高度緊満を認め,術中腋窩動脈送血に伴い右上肢虚血となり筋腎代謝症候群をきたしたと考えられた.乏尿となり血液浄化を必要としたが,経過に伴い離脱できた.術後早期には右上肢挙上不可,感覚低下を認めたが,リハビリテーションにより徐々に軽快し社会復帰可能となった.

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