2019 年 28 巻 2 号 p. 149-154
膝窩動脈瘤は一施設で多くを経験するほどの発症率ではなく治療法について迷うことも多い.膝窩動脈瘤手術症例8例11肢について検討した.閉塞範囲が中枢まで伸びていた1例に仰臥位内側到達法でバイパス手術を行った以外はすべて腹臥位後方到達法にて手術を施行した.グラフトは人工血管5肢,大伏在静脈4肢,小伏在静脈2肢であった.全例術前に超音波検査を施行して自家静脈をマーキングした.静脈採取のための体位変換はしなかった.3例で内視鏡下大伏在静脈採取を施行した.両側人工血管置換術の1例は早期に経過観察から離脱した.人工血管グラフトが術後7日目に閉塞した以外はすべて開存している(最長3376日).膝窩動脈瘤治療において,外科手術は良好な成績であった.その中でも腹臥位後方到達法での小伏在静脈グラフト使用あるいは内視鏡下大伏在静脈採取は症例を選択すれば,切開が膝窩のS状切開のみで行える点で有用と考えられた.