2019 年 28 巻 5 号 p. 373-376
膝窩動脈分岐異常を有するため重症化した急性下肢虚血の症例を経験したので報告する.77歳女性,4日前からの左足部痛を主訴に紹介受診.造影CTで腓骨動脈遠位部の塞栓症を疑わせる閉塞像,側副血行路を介して足関節レベルでの後脛骨動脈以下の開存を認めた.急性下肢虚血(Acute limb ischemia: ALI);グレードIの診断にて薬物治療の方針としたが入院後から左下肢の虚血症状は急速に増悪し安静時疼痛,チアノーゼが出現した.初回の造影CTを見直すと健側の後脛骨動脈の欠損と前脛骨動脈の低形成を認めた.これを参考に左側も腓骨動脈が直接かつ唯一足底動脈へ流入する膝窩動脈分岐異常と判断し,腓骨動脈に対する血栓除去を施行,良好な血流改善を得た.予想される予後に比し急激な増悪経過をたどるALIは血管形成異常の可能性も念頭におき的確な診断,治療方針の選択が重要と考えられる.