症例は70歳男性.右下肢腫脹が出現して16日目に造影CTを施行,大腿血腫の診断で帰宅された.発症後23日目に症状増悪し下腿蜂窩織炎の診断で緊急入院.CTで70 mmの右膝窩動脈瘤と下腿に進展する血腫を認め,対側膝窩動脈の拡張を認めた.緊急手術を施行.腹臥位膝窩後方アプローチで筋膜を切開すると瘤壁は不詳で多量の血腫が排出,更に膝窩動脈破裂孔から出血した.大腿にあらかじめ巻いたターニケットで駆血して出血をコントロールした.破裂孔の中枢末梢をトリミングし6 mm EPTFEグラフトで置換した.合併症なく術後12日で退院した.本症例の診断であるが,術前の画像診断と術中所見で明らかな瘤壁が認められなかったことなどから膝窩動脈の破裂,仮性動脈瘤であると思われた.成因としては炎症性疾患,感染,外傷,医原性などの原因は否定的で特発性の膝窩動脈破裂の可能性が考えられた.術後の創感染や遠隔期に至るまでの仮性瘤の再発は認められていない.