日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
28 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
症例
  • 山崎 一也, 松木 佑介, 出淵 亮, 磯田 晋, 矢野 善己, 益田 宗孝
    2019 年28 巻5 号 p. 349-353
    発行日: 2019/09/14
    公開日: 2019/09/14
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は70歳男性.右下肢腫脹が出現して16日目に造影CTを施行,大腿血腫の診断で帰宅された.発症後23日目に症状増悪し下腿蜂窩織炎の診断で緊急入院.CTで70 mmの右膝窩動脈瘤と下腿に進展する血腫を認め,対側膝窩動脈の拡張を認めた.緊急手術を施行.腹臥位膝窩後方アプローチで筋膜を切開すると瘤壁は不詳で多量の血腫が排出,更に膝窩動脈破裂孔から出血した.大腿にあらかじめ巻いたターニケットで駆血して出血をコントロールした.破裂孔の中枢末梢をトリミングし6 mm EPTFEグラフトで置換した.合併症なく術後12日で退院した.本症例の診断であるが,術前の画像診断と術中所見で明らかな瘤壁が認められなかったことなどから膝窩動脈の破裂,仮性動脈瘤であると思われた.成因としては炎症性疾患,感染,外傷,医原性などの原因は否定的で特発性の膝窩動脈破裂の可能性が考えられた.術後の創感染や遠隔期に至るまでの仮性瘤の再発は認められていない.

  • 末廣 泰男, 中平 敦士, 瀬尾 浩之, 窪田 優子, 賀来 大輔, 平居 秀和
    2019 年28 巻5 号 p. 355-359
    発行日: 2019/09/21
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル オープンアクセス

    大腿動脈まで波及した鼠径部感染を認めた場合,感染の制御や下肢の血行再建に難渋することが多い.症例は72歳,男性.当院にて大伏在静脈を用いて左大腿膝窩動脈バイパス術を施行後,他院にて右下肢の血管内治療のため左鼠径部を穿刺され,17日後に当院に救急搬送された.CTで穿刺が原因と考えられる仮性動脈瘤を認め,破裂孔に対して大伏在静脈によるパッチ形成術を行った.血腫の培養からStaphylococccus aureus(MSSA)を認め,抗生剤加療を行うも吻合部出血をきたし,静脈グラフトによる間置再建術,大腿筋膜張筋による筋皮弁充填術を行った.しかし感染は制御し得ず,最終的に大腿動脈の郭清,閉鎖孔バイパス術,筋皮弁再充填術を行った.術後は感染の再燃を認めず,独歩で退院した.感染性仮性大腿動脈瘤を伴う鼠径部感染に対して,大腿動脈郭清,閉鎖孔バイパス術を行い,下肢を温存し感染を制御し得たため報告する.

  • 芥田 壮平, 米倉 孝治, 菅野 範英
    2019 年28 巻5 号 p. 361-365
    発行日: 2019/09/28
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

    長期にわたる透析用動静脈瘻(AVF)使用後に真性上腕動脈瘤を発症した症例報告は,世界的に数十例である.われわれは,血管アクセスに関連した真性上腕動脈瘤の1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は49歳男性で,慢性腎不全のため35年の透析歴があった.左前腕AVFを20年間使用していたが閉塞したため,右前腕にAVFを作成した.以降15年間,左上肢の血管を穿刺したことはなかった.左手の痺れを自覚し医療機関を受診した際に,左手の色調不良と上腕の拍動性腫瘤を指摘された.造影CTでは,左上腕動脈は近位より拡張し,左上腕深動脈が分岐した直後から瘤化しており,拡張の強い部位に壁在血栓を伴っていた.左手の痺れと色調不良は壁在血栓による塞栓症状と考えられたため,左上腕動脈瘤切除術,右大伏在静脈グラフト置換術を施行した.塞栓症状を呈する真性上腕動脈瘤に対し,外科的治療は有用であった.

  • 泉二 佑輔, 加藤 貴吉, 関 淳, 津村 康介, 富田 伸司, 大川 育秀
    2019 年28 巻5 号 p. 367-371
    発行日: 2019/10/08
    公開日: 2019/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    腹部大動脈ステントグラフト内挿術後に,B型急性大動脈解離によってステントグラフト閉塞および重症下肢虚血を認め,更に血行再建後に腹部大動脈瘤破裂を合併した症例を経験したので報告する.症例は3年前に当院でEVARを施行された62歳男性.突然の背部痛・両下肢脱力を主訴に救急受診した.造影CTでB型急性大動脈解離および偽腔によるステントグラフト閉塞,両側急性下肢動脈閉塞と診断し,右腋窩–両側大腿動脈人工血管バイパス術を施行した.術直後にshock vitalを伴う腹部大動脈瘤破裂となり,引き続きステントグラフト部分抜去・大動脈および両側総腸骨動脈の断端閉鎖を施行した.術後下肢壊死による筋腎代謝症候群となり左下肢切断を要したが,救命に成功した.EVAR症例が増加する一方で,多様な合併症が報告されてきた.若年層に対するEVARの適応について慎重になるべきであると思われた.

  • 新谷 隆, 澁谷 卓
    2019 年28 巻5 号 p. 373-376
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩動脈分岐異常を有するため重症化した急性下肢虚血の症例を経験したので報告する.77歳女性,4日前からの左足部痛を主訴に紹介受診.造影CTで腓骨動脈遠位部の塞栓症を疑わせる閉塞像,側副血行路を介して足関節レベルでの後脛骨動脈以下の開存を認めた.急性下肢虚血(Acute limb ischemia: ALI);グレードIの診断にて薬物治療の方針としたが入院後から左下肢の虚血症状は急速に増悪し安静時疼痛,チアノーゼが出現した.初回の造影CTを見直すと健側の後脛骨動脈の欠損と前脛骨動脈の低形成を認めた.これを参考に左側も腓骨動脈が直接かつ唯一足底動脈へ流入する膝窩動脈分岐異常と判断し,腓骨動脈に対する血栓除去を施行,良好な血流改善を得た.予想される予後に比し急激な増悪経過をたどるALIは血管形成異常の可能性も念頭におき的確な診断,治療方針の選択が重要と考えられる.

  • 長谷川 雅彦, 櫻井 裕介, 堀内 和隆, 薦田 さつき, 水谷 真一, 湯浅 毅
    2019 年28 巻5 号 p. 377-381
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

    腹部大動脈瘤人工血管置換術14年後にTypeII様エンドリークにより被覆瘤壁が破裂した症例を経験した.症例は70歳代,女性.X年に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術,X+11年にA型大動脈解離のため上行大動脈置換術を受けている.X+14年に突然腰背部痛が出現し受診した.CT検査では人工血管に置換された腹部大動脈と被覆した瘤壁との間に造影剤の貯留を認めた.その後,瘤壁の拡大を認め早期の手術を予定していたが,7日目にショックに陥った.CT検査で後腹膜に多量の出血を認め,被覆瘤壁の破裂と診断し緊急手術を行った.被覆瘤壁を切開すると腰動脈から出血を認め,これを縫合止血した.吻合部瘤や人工血管の破損は認めなかった.人工血管置換術後に被覆瘤壁が大動脈分枝からの逆流によって破裂に至った原因にはA型大動脈解離の影響も推測された.人工血管置換術後においても術後の経過時間に関わらず念頭に置くべきである.

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