日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
特発性大動脈破裂の1例
近藤 健介 徳永 宜之渡邊 達也磯田 竜太郎森田 一郎杭ノ瀬 昌彦
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2020 年 29 巻 1 号 p. 61-65

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抄録

52歳男性,突然の胸腹部痛で救急搬送された.造影CTでulcer-like projection, 縦隔内血腫および心囊液貯留を認めたが,intimal flapは認めなかった.心タンポナーデとなり,偽腔閉塞型急性大動脈解離もしくは特発性大動脈破裂の疑いで緊急手術を施行した.縦隔内および心囊内に鮮紅色の血液と血腫を認め,上行大動脈壁に亀裂部位と血栓様塞栓物を認めた.破裂部位周辺の大動脈には明らかな大動脈解離は認めず,特発性大動脈破裂と診断し,上行大動脈人工血管置換術を施行した.病理診断では大動脈壁に穿孔,外膜血腫および,cystic medial degenerationを認めた.術後経過は良好で,術後11日目に独歩退院した.特発性大動脈破裂は稀な疾患ではあるが,原因不明の血性心囊液貯留や縦隔内血腫を認めた場合,動脈瘤や大動脈解離の所見は認めなくても,特発性大動脈破裂を念頭に置く必要がある.

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