2014年に日本で行われた血管外科手術について,日本血管外科学会データベース管理運営委員会が集計結果を解析し,アニュアルレポートとして報告する.【方法】NCDの血管外科手術データに基づき,全国における血管外科手術動向およびその短期成績(術死,在院死亡)を解析した.【結果】2014年にNCDに登録された血管外科手術は113,296件であり,1,002施設からの登録があった.このデータベースは,7つの血管外科分野すなわち動脈瘤,慢性動脈閉塞,急性動脈閉塞,血管外傷,血行再建合併症,静脈手術,その他の血管疾患からなっており,それぞれの登録症例数は,21,085, 14,344, 4,799, 2,088, 1,598, 42,864, および26,518例であった.腹部大動脈瘤(含む腸骨動脈瘤)は17,973例で,その55.7%がステントグラフト(EVAR)により治療されている.1,824例(10.1%)の破裂例を含んでおり,手術死亡率は破裂,非破裂で,それぞれ16.1%,0.6%であった.破裂症例に対するEVARは32.1%を占め,比率が年々増加しているが,置換術とEVARの手術死亡率はそれぞれ15.7%と18.0%であり,有意差はなかった.慢性動脈閉塞症は,重複を含み14,344例登録され,open repair 8,020例(うちdistal bypass 1,210例),血管内治療6,324例が施行された.血管内治療の割合が44.1%であった.静脈手術では,下肢静脈瘤手術が41,246例と急激に増加し,このうちレーザー治療(EVLA)が18,861例で,はじめて手術法としてストリッピング術を超えて最多となった.下肢深部静脈血栓症は520例であった.その他の手術として,バスキュラーアクセス手術25,024例,下肢切断1,322例が登録された.【結語】2013年と比較して,全領域において血管内治療が増加しており,とくに動脈瘤に対するステントグラフト内挿術,慢性動脈閉塞症に対する血管内治療や下肢静脈瘤に対するレーザー焼灼術の増加が目立った.
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