末梢動脈疾患(peripheral arterial disease; PAD)は増加の一途をたどり,PAD治療に要する医療費も増大し続けている.PADの症状は無症候性から重症虚血肢まで多岐にわたり,その治療は集学的になされるべきであるが,PAD診療を行う個々の医師の診断能力および選択される治療法は一様ではない.そこで,米国血管外科学会(SVS)の下肢診療ガイドライン委員会から,無症候性PADおよび間欠性跛行の診療を支援するガイドラインが2015年に作成された.本ガイドラインでは,無症候性PAD患者に対する侵襲的治療は無作為に行うべきではないこと,間欠性跛行肢に対する侵襲的治療は有効性が少なくとも2年以上継続する見通しが50%を超えること,総大腿動脈病変は外科的治療(血栓内膜切除)をすべきで血管内治療の適応は原則ないこと,などが強調されている.