日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
腹部症状を伴わず急性心不全で発症した腹部大動脈瘤破裂(腹部大動脈下大静脈瘻)の一救命例
景山 聡一郎 高木 睦郎豊田 真帆
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2020 年 29 巻 2 号 p. 113-116

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抄録

腹部大動脈下大静脈瘻は非常に稀で,症状も多彩で診断の遅れから臓器不全で死亡することも少なくない.症例は49歳の男性で,一週間前から続く労作時呼吸苦で近医を受診し,CT検査にて巨大腹部大動脈瘤を認め手術目的に当院転院となった.腹部症状は認めず,急性心不全および肝障害を認めた.経胸壁心エコー検査にて明らかな弁膜症,壁運動異常を認めなかったことから腹部大動脈下大静脈瘻を疑い,造影CT検査にて確定診断し,緊急手術とした.開腹すると後腹膜内には血種を認めず,大動脈瘤右側で下大静脈へ穿破していた.瘻孔は瘤壁を支持組織として瘤内から直接縫合閉鎖し,その後,人工血管置換術を施行した.術後よりすみやかに心不全,肝障害は改善し術後17日目に独歩退院を得た.今回,腹部症状を伴わず急性心不全にて発症した腹部大動脈下大静脈瘻の一救命例を経験したので報告する.

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