2020 年 29 巻 5 号 p. 293-297
梅毒性大動脈瘤は抗生剤治療が発達した現代では希な疾患と考えられてきたが,2010年頃より梅毒患者数が増加し,大動脈瘤の原因として梅毒を以前よりも疑う必要が出てきた1, 2).血清学的検査などから梅毒性大動脈瘤を疑い治療を行った症例を経験した.術前抗生剤治療の効果などに関する考察を行い報告する.症例は63歳,男性.呼吸苦を主訴に当院循環器内科に紹介された.中等度大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈瘤を認めた.梅毒血清学的検査はRPR, TPHA共に陽性で定量的検査は共に高値であった.内科的心不全治療および梅毒治療後に,大動脈弁置換術および上行大動脈人工血管置換術を施行した.病理検査から梅毒性大動脈瘤と診断した.術後経過に問題なく術後11日目に退院となった.術後CTでは吻合部仮性瘤は認めなかった.現在,術後約1年経過しているが経過に大きな問題は認めていない.