2020 年 29 巻 5 号 p. 281-284
症例は54歳,男性.慢性大動脈解離の既往があり吐血,黒色便による貧血を認め入院となった.上部消化管内視鏡で食道壁に出血痕を認めた.造影CTでは右側大動脈弓と4本の弓部分枝を認め左鎖骨下動脈は囊状拡大したKommerell憩室より分岐しており,下行大動脈瘤破裂と瘤内airを認めた.胸部大動脈瘤食道穿破と診断し右第4肋間開胸で下行大動脈置換術と左鎖骨下動脈再建を行った.同時に破裂部食道抜去を行い頸部食道瘻と胃瘻を造設した.Stanford B型慢性大動脈解離を合併した右側大動脈弓に胸部大動脈瘤食道穿破を起こした稀な症例の救命に成功したため文献的な考察を加えて報告する.