2020 年 29 巻 6 号 p. 399-403
大腿深動脈瘤は稀な疾患で,術後再発例の報告も少ない.また腹部大動脈から下肢動脈にかけてびまん性の血管拡張を認める病態はarteriomegalyといわれ,その多くは末梢動脈瘤を合併するといわれている.今回われわれは大腿深動脈瘤の術後15カ月に再発したarteriomegalyを伴った大腿深動脈瘤の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.症例は74歳男性.15カ月前に左大腿深動脈瘤に対して瘤切除と自家静脈による総大腿動脈–大腿深動脈バイパス術を施行された.今回,左大腿部に拍動性腫瘤を自覚され,造影CT検査にて45 mm大の左大腿深動脈瘤の再発と血管造影検査にて両側総腸骨動脈から膝窩動脈にかけてびまん性の血管拡張を認めた.手術では,前回手術時の末梢側吻合部以遠に新たな大腿深動脈瘤を認め,瘤切除と人工血管置換術を施行した.順調に経過し退院に至り,術後3年の現在も再発なく経過している.