2021 年 30 巻 2 号 p. 109-112
症例は52歳,男性.3日前からの右上肢冷感,痺れを主訴に当院受診した.右橈骨動脈は拍動触知せず,上肢血圧の左右差を認めた.右上肢急性動脈閉塞症を疑い,造影CTを施行したところ,右鎖骨下動脈血栓閉塞像およびその原因と思われる上行弓部大動脈内血栓を認め,右上肢急性動脈閉塞症治療を先行させる方針とした.血栓は右椎骨動脈分枝直下から位置しており,上腕動脈アプローチでのバルーンカテーテルによる血栓除去は椎骨動脈塞栓症のリスクがあると考え,右鎖骨上切開による鎖骨下動脈アプローチを選択した.鎖骨上切開では,椎骨動脈およびその分枝中枢の鎖骨下動脈の剝離が可能であり,椎骨動脈を直接遮断した上で血栓除去を行った.術後経過は問題なく,脳梗塞の合併は認めなかった.手術手技による椎骨動脈塞栓のリスクがあると考えられる上肢急性動脈閉塞症に対して,鎖骨上切開アプローチが有用と考えられたため報告する.