日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
胸部大動脈ステントグラフト内挿術後にアクセスルートである外腸骨動脈の脱落内膜により急性下肢動脈閉塞を合併した一例
岸田 賢治野村 幸哉三重野 繁敏
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 30 巻 2 号 p. 89-93

詳細
抄録

総大腿動脈(CFA)から太径シースを用いて行う血管内治療では大小さまざまなアクセスルートの合併症が起こり得る.われわれはCFA経由で胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行い,太径シース抜去後に外腸骨動脈の脱落内膜が塞栓子となり,急性下肢動脈閉塞を合併した症例を経験した.症例は79歳,女性.胸部下行大動脈瘤に対して,左CFAから22 Frシースを腹部大動脈まで挿入し,TEVARを行った.シース抜去前のアクセスルート造影で左総腸骨動脈に限局解離を認めた.シース抜去後,CFA遮断下に脱落内膜の摘出,血管形成を行い,下肢再灌流を行った.術後の超音波,造影CT検査で左浅大腿動脈の完全閉塞所見を認めた.緊急塞栓除去後,下肢動脈血流は回復した.塞栓子は6 cm長の脱落内膜だった.本症例を通して血管内治療後のアクセスルートである腸骨動脈領域の内膜脱落のメカニズム,対処法について考察した.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top