2021 年 30 巻 2 号 p. 89-93
総大腿動脈(CFA)から太径シースを用いて行う血管内治療では大小さまざまなアクセスルートの合併症が起こり得る.われわれはCFA経由で胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行い,太径シース抜去後に外腸骨動脈の脱落内膜が塞栓子となり,急性下肢動脈閉塞を合併した症例を経験した.症例は79歳,女性.胸部下行大動脈瘤に対して,左CFAから22 Frシースを腹部大動脈まで挿入し,TEVARを行った.シース抜去前のアクセスルート造影で左総腸骨動脈に限局解離を認めた.シース抜去後,CFA遮断下に脱落内膜の摘出,血管形成を行い,下肢再灌流を行った.術後の超音波,造影CT検査で左浅大腿動脈の完全閉塞所見を認めた.緊急塞栓除去後,下肢動脈血流は回復した.塞栓子は6 cm長の脱落内膜だった.本症例を通して血管内治療後のアクセスルートである腸骨動脈領域の内膜脱落のメカニズム,対処法について考察した.