2021 年 30 巻 3 号 p. 189-193
【目的】腹部大動脈瘤–腸管瘻(AEF)は解決すべき問題が多く治療方針に苦慮する.当院では複数例で良好な成績が得られており,その治療戦略について報告する.【方法】治療戦略にて肝要な点は①迅速な出血制御,②瘻孔の処理,③感染制御である.まず腹部ステントグラフト(EVAR)で出血を制御する.その後,開腹にて腸管修復および瘤内に大網充填を行う.低侵襲性を優先しステントグラフトは抜去しない.培養結果より抗生剤を選択し長期投与する.【結果】2016年から2020年までに5例のAEFを経験した.3例は一次性AEF, 2例は二次性でEVAR後1例,人工血管置換術後1例であった.前述の治療法を行い,1例が術後肺炎にて死亡したが,4例は退院し術後平均17.8カ月(2.1~53.8)経過するも感染兆候は認めていない.【結論】AEFに対し出血制御・瘻孔処理・感染制御を軸とした治療を行い良好な成績が得られた.