2021 年 30 巻 5 号 p. 319-324
症例は69歳男性.当院脳神経外科で頸動脈ステント留置術を予定されたが,術前に判明した左総腸骨動脈囊状瘤に対する治療目的に当科へ紹介となった.併存疾患による合併症リスクから血管内治療を検討され,局所麻酔下にベアメタルステントを用いたstent assisted techniqueによるコイル塞栓術を行った.術後造影では瘤内の造影所見は消失し,合併症なく術後2日目に退院となった.ステント併用の瘤内コイル充填による治療は主に脳動脈瘤に対して行われることが多く,総腸骨動脈領域の囊状瘤に対する同治療の報告はない.一般的にはステントグラフトを用いた血管内治療が選択されることが多いが,デバイスの適応や側副血行路への影響など制限が生じる場合がある.本例で行ったベアメタルステントを用いた手技は内腸骨動脈血流を温存し得るひとつの方法として有用であると考えられた.