2021 年 30 巻 5 号 p. 325-328
足背動脈瘤は動脈瘤の中でも非常に稀である.今回,敗血症治癒後に発生した足背動脈瘤に対して瘤切除および動脈再建を行い,良好に経過したので報告する.症例は48歳,男性.未治療のアトピー性皮膚炎からMRSA敗血症となり胸腰椎硬膜外膿瘍,腰椎化膿性脊椎炎を併発した.左足関節の痛みが出現したが単純CTにて異常はなかった.抗菌薬の投与と硬膜外膿瘍および化膿性脊椎炎に対するドレナージ術にて,感染は2カ月で治癒した.感染治癒から2カ月後,左足背部に違和感を伴う拍動性腫瘤を自覚した.超音波検査にて33×17×27 mm大の囊状左足背動脈瘤と診断し,局所麻酔下に瘤を切除し端々吻合にて足背動脈を再建した.病理組織学的に動脈瘤は仮性瘤で,明らかな感染や炎症を示唆する所見は認めなかった.打撲や動脈穿刺などの外傷の既往はなく,臨床経過から敗血症を契機に発生した感染性動脈瘤と診断した.