症例は67歳男性.既往に左右大腿–膝下膝窩動脈(femoral popliteal below knee; F-PBK)バイパス術(左:自家静脈,右:人工血管)あり.右F-PBKバイパス術後2年0カ月目に皮膚冷感を伴う突然の右下腿痛が出現し,右下肢人工血管バイパス閉塞による急性下肢虚血の診断で当院紹介となった.同日緊急で全バイパスグラフ内と前脛骨動脈まで血栓除去術を行ったが閉塞機転は不明であった.術後造影CTにて人工血管末梢吻合部近くに残存狭窄を認め,3D解析にて膝関節屈曲による変形狭窄と判断し,同部位が血栓閉塞の起点と判断した.再閉塞予防のため同部位に上腕動脈アプローチで金属ステント留置術を行い,退院した.術後1年経過したが,バイパス人工血管の再閉塞を認めなかった.F-PBK人工血管内狭窄に対する金属ステント留置術は一般的治療ではなく,報告例も乏しいが,治療の選択肢が少ないと思われるF-PBK人工血管内狭窄症例には治療手段の一つとして検討しうると考えられた.