日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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症例
Stanford A型急性大動脈解離に対する部分弓部人工血管置換術の10時間後に生じた右下肢不全麻痺の1例
塩屋 雅人 月岡 祐介立石 烈中原 嘉則山名 孝治金村 賦之
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2022 年 31 巻 1 号 p. 27-30

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抄録

Stanford A型急性大動脈解離に対する部分弓部人工血管置換術後に遅発性片麻痺を生じた症例を経験した.症例は65歳の男性で突然の胸痛のため近医を受診し,偽腔閉塞型のStanford A型急性大動脈解離と診断され当院に搬送された.術前の意識状態は清明で運動障害も認めなかった.左大腿動脈送血,右房脱血で人工心肺を確立し,膀胱温27°Cの中等度低体温循環停止,選択的脳分離灌流下に部分弓部人工血管置換術を施行した.Entryは上行・弓部に認めず,DeBakey IIIB型の逆行性解離が疑われた.術後経過は良好で術後8時間で人工呼吸器を離脱した.術後10時間後に右下肢の不全麻痺を起こしたため,頭部CTを施行したが急性期頭蓋内病変を認めなかった.脊髄虚血に伴う片麻痺と診断し,速やかに脊髄ドレナージとステロイドパルス,ナロキソン投与を開始した.治療開始直後より右下肢の膝立てが可能となった.リハビリを続け,術後20日目に術前のADL相当で独歩退院となった.

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