日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
ショックを伴う破裂性胸部大動脈瘤に対して,クラウド型モバイルネットワークを活用し,迅速な治療を行い救命し得た1例
辻本 貴紀 山中 勝弘長命 俊也山口 雅人杉本 幸司岡田 健次
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 31 巻 2 号 p. 97-101

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抄録

大動脈緊急症の治療において初診時から治療までの時間を短くすることは非常に重要である.その一方で,大動脈緊急症は治療できる施設が限られており,しばしば初診の病院から専門施設への転送を必要とする.今回,破裂性胸部大動脈瘤の患者に対して詳細な患者情報を施設間でシームレスに共有できるクラウド型モバイルネットワークを用いて,施設間の搬送に要する時間を利用して手術準備を行った.症例は85歳,男性.突然の背部痛を自覚し前医へ救急搬送された.前医にてCTを撮影し,当院へ電話連絡後,クラウド型モバイルネットワークを通じて患者情報を共有した.下行大動脈瘤破裂と診断すると同時に当院で胸部ステントグラフト内挿術の準備を開始した.当院到着時に患者はショック状態であったが,手術準備は完了していたため,迅速に治療し救命し得た.クラウド型モバイルネットワークは大動脈緊急症の治療において欠かせないものになると思われる.

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