日本血管外科学会雑誌
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症例
右上肢急性動脈閉塞症に対する血栓除去直後に前腕部コンパートメント症候群を発症した1例
村上 皓彦 橋本 宗敬玉手 義久佐藤 博子宇田川 輝久下沖 裕太郎
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2022 年 31 巻 2 号 p. 85-89

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抄録

上肢の急性動脈閉塞症に対する血栓除去術直後に,前腕部コンパートメント症候群を生じた極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.突然,右手指の疼痛と運動知覚障害を発症し,救急搬送された.右上肢急性動脈閉塞症と診断し,血栓除去術を行い,発症から約6時間後に右上肢血流を回復した.ところが,再灌流直後から急激な右前腕の疼痛と腫脹を生じた.造影CT検査を行ったところ,前腕筋群(浅指屈筋,深指屈筋)の著明な腫脹・造影効果の減弱を認め,コンパートメント症候群と診断した.右前腕浅・深掌側区画の筋膜切開を行って,圧を開放した.筋膜切開創に対し,後日植皮を行い,37病日に治癒退院した.術後1年の経過にて後遺症を認めない.本症例では,前腕部コンパートメント症候群の診断に,造影CT検査が有用であった.

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