2022 年 31 巻 3 号 p. 117-121
症例は73歳女性.高血圧性心不全のため当院循環器科で精査加療が開始され,精査の結果,異型大動脈縮窄症,両側鎖骨下動脈閉塞症,左総頸動脈閉塞症を認め,高安動脈炎と診断され降圧薬を中心とした薬物治療が行われていた.高血圧性心不全のため頻回の入院を繰り返し,内科的治療困難のため外科的治療の方針となった.手術は胸骨および腹部正中切開アプローチで,人工心肺使用下に径14 mmの人工血管にて上行大動脈–腹部大動脈バイパス術を施行した.バイパス後,上–下半身の圧較差は消失した.術後経過は良好で第29病日に軽快退院した.術後2年経過した現在,高血圧はコントロールが可能となり,腎機能,左室心筋負荷所見とも良好に改善している.本術式は,術中の体位変更不要で,良好な手術視野が得られ,十分な口径の人工血管を用いてバイパスができる点で優れており,術後確実な後負荷軽減と高血圧症の改善が得られている.