2023 年 32 巻 3 号 p. 191-195
解離性大動脈瘤に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)が合併することはこれまでにも報告されている.解離性大動脈瘤に伴うDICの根治治療は外科治療となるが,さまざまな臨床的要因で内科的治療のみで対応しなければならないこともあり,その治療法は確立されていない.64歳男性,Stanford A型急性大動脈解離に対し全弓部大動脈置換術を施行,その1年後にDICを発症した.外科的治療も検討したが,下行大動脈最大径は50 mmで,ADL低下があり内科的治療を試みた.輸血や遺伝子組み換えトロンボモジュリン製剤の投与効果は一時的で中止後に再燃したが,トラネキサム酸経静脈投与によりDICを脱し,経口投与でDIC寛解維持が可能であった.また,内服継続投与により偽腔は血栓化し,瘤径の縮小を得ることができた.