2023 年 32 巻 5 号 p. 393-397
椎体破壊を伴う胸部下行大動脈囊状動脈瘤の症例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.初診時から最大短径(horizontal diameter)40 mmの胸部下行大動脈囊状動脈瘤に近接する椎体破壊を認めており,8カ月の経過で大動脈瘤径が43 mmとなった.持続的に周囲組織へ高い圧力が作用している状態を疑い,TEVARでの治療を行った.術直後からエンドリークを認めていたが,原因部位が同定困難であったため,経過観察とした.8カ月間で瘤径が52 mmに拡大し,椎体破壊の進行,および背部に根性痛の出現を認めた.追加治療のため,再度CT検査で評価し,ステントグラフト中枢端のbird-beakを原因とするタイプIaエンドリークと診断した.このため,two debranchingを行い,TEVARで中枢端をゾーン1まで延長し,エンドリークの停止を得た.術後は椎体破壊の進行は見られず,2年後の経過で瘤径の縮小が認められる.