2024 年 33 巻 1 号 p. 7-10
肺動脈血管内膜肉腫は,予後不良な疾患であり発生頻度は0.001–0.03%とされる.特異的な臨床症状はなく早期診断は困難とされる.本症例では自覚症状はなくCTスキャンで腫瘍は左肺動脈から主肺動脈に進展しており,肺動脈肉腫が疑われた.手術は左肺全摘除術および人工心肺下に人工血管を使用した右肺動脈–主肺動脈の再建を施行し,肉眼的に完全切除することができた.肺動脈血管内膜肉腫は外科的切除が推奨されるが,根治的完全切除が施行された報告は少数である.また麻酔導入時に心停止となった症例の報告もあり,われわれの症例では全身麻酔を導入する前に局所麻酔下で送脱血管を留置し人工心肺に接続して待機し,麻酔導入時の循環不全に備えた.また人工血管を用いた血行再建により腫瘍の完全切除が可能であった.術後6カ月で局所再発は認められず,9カ月の予後が得られた.