2025 年 34 巻 1 号 p. 5-9
腹部大動脈人工血管置換術後の大動脈–十二指腸瘻は稀であるが致死的合併症の一つである.外科的治療が原則だが,標準的な治療法はまだ確立されていない.人工血管と十二指腸が接触して瘻孔が形成された症例では,十二指腸を解剖学的経路で残すことは再発の危険性が高いと考えられる.そのため再発を予防するには十二指腸を修復するとともに人工血管と接触させないことが重要と考えられる.今回われわれは腹部大動脈瘤術後に人工血管–十二指腸瘻を発症した2例に対して,人工血管再置換術と十二指腸部分切除,そして空腸結腸後経路再建による十二指腸空腸吻合を施行した.1例目は大網充填を同時に行い,2例目は大網組織が乏しかったため使用できなかったが,2例とも感染の再発なく良好な経過を得た.腸管再建経路を変更する本方法は人工血管が直接十二指腸に接触せず,感染再発防止に有効な可能性があると考えられる.