2025 年 34 巻 2 号 p. 43-47
通常thoracic endovascular aortic repair(TEVAR)は大腿動脈から逆行性にアプローチするが,困難な場合には治療法やアクセス血管の再検討が必要になる.症例は76歳男性.高位大動脈閉塞症に右腋窩–両側大腿動脈パイパス術を施行し4年後に下行大動脈瘤と急性大動脈解離を合併した.左腎(ドナー腎)摘出後,呼吸状態の悪化,大腿動脈からの逆行性灌流が不可能などの理由から,胸部人工血管置換術は難しく,また腹腔内癒着や大動脈盲端が近く右腎動脈への塞栓症が考えられ,経上行大動脈TEVARを施行した.Th6からTh12まで留置したが,脊髄虚血を認めなかった.今回,われわれはTEVARを行う際に従来のアクセス方法が困難な症例に対し,経上行大動脈からの順行性アプローチが有効であったため,手術工夫や文献的考察を加え報告する.