水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
研究論文
沿岸海域における付着動物の環境指標種としての検討
梶原 葉子山田 真知子
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 42 巻 2 号 p. 53-65

詳細
抄録

付着動物の環境指標性を検討するため, 北九州市洞海湾で富栄養化の極めて著しかった1991~’92年 (前期) と工場排水の規制により全窒素・全リン濃度が著しく低下した2010~’11年 (後期) の両期間について, 水質と付着動物組成の調査を同様の方法で実施し, 得られた結果の比較検討を客観的に行った。富栄養化の改善された後期には溶存酸素が湾奥部まで行きわたったのに伴い, 海綿類や苔虫類が湾奥部まで分布するようになった。また, 後期には付着動物の全出現種類数が前期の約1.6倍となり, とくに軟体動物の巻貝類は出現種の変化と増加が顕著で, 軟体動物の種多様度指数も増加した。一方, ムラサキイガイとマガキの二枚貝類2種の総湿重量が後期には前期の約1.2%にまで減少し, 両種の激減には水温上昇の影響も確かめられた。以上のことから, 付着動物の種や組成が富栄養化や海水温上昇などの環境指標として利用できる可能性が示された。

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本水環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top