諫早湾では, 無機態窒素が枯渇状態でも赤潮が長期化する現象が頻発している。湾内には, 干拓調整池から溶存有機態窒素 (DON) を高濃度に含む池水が排水されており, これが湾内の赤潮を支える窒素源となっている可能性が指摘されている。本研究では, 諫早湾の海水に調整池から抽出した高分子溶存態有機物 (UF-DOM) を添加し, 湾内の植物プランクトンの成長が促進されるのかを検証した。諫早湾の海水に調整池由来UF-DOM, または調整池由来UF-DOMと抗生物質を添加し, 植物プランクトンの成長速度をサイズ分類群ごとに算出した。マイクロ植物プランクトンのみ, UF-DOM添加系とUF-DOM・抗生物質添加系の両方で成長が促進された。諫早湾の赤潮プランクトンの大部分はマイクロ植物プランクトンに分類されるため, 湾内への調整池由来のDONの流入は, 赤潮を支える窒素源としてその長期化に寄与している可能性がある。