水環境学会誌
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46 巻, 5 号
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研究論文
  • 高松 由樹, 石黒 伶奈, 明地 柚乃, 黒田 啓介, 端 昭彦
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 46 巻 5 号 p. 113-122
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    集団感染症が報告されていない平常時において, 小学校やスポーツクラブなどのプールを対象に糞便汚染指標細菌・ウイルス, 腸管系ウイルスやレジオネラ属菌の検出を試み, 微生物汚染の実態調査と汚染要因の検証, 汚染指標の有効性評価を行った。利用状況等の条件によっては指標微生物の検出率が高くなった。大腸菌, F特異大腸菌ファージは培養法で検出され, 現行の管理手法では完全な不活化は困難だと考えられた。Pepper mild mottle virus, cross-assembly phageや, ヒト特異的なバクテロイデス属菌の遺伝子マーカーであるHF183は高頻度で検出され, 特にcross-assembly phage, HF183は水質管理下のプールにおいてもヒト糞便汚染指標としての有効性が示唆された。腸管系ウイルスは不検出であったが, 感染者の利用により, 感染力を保持したウイルスが滞留する可能性が示された。

ノート
  • 小柳 凜太郎, 白垣 友寛, 高巣 裕之
    原稿種別: ノート
    2023 年 46 巻 5 号 p. 123-130
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/10
    ジャーナル フリー

    諫早湾では, 無機態窒素が枯渇状態でも赤潮が長期化する現象が頻発している。湾内には, 干拓調整池から溶存有機態窒素 (DON) を高濃度に含む池水が排水されており, これが湾内の赤潮を支える窒素源となっている可能性が指摘されている。本研究では, 諫早湾の海水に調整池から抽出した高分子溶存態有機物 (UF-DOM) を添加し, 湾内の植物プランクトンの成長が促進されるのかを検証した。諫早湾の海水に調整池由来UF-DOM, または調整池由来UF-DOMと抗生物質を添加し, 植物プランクトンの成長速度をサイズ分類群ごとに算出した。マイクロ植物プランクトンのみ, UF-DOM添加系とUF-DOM・抗生物質添加系の両方で成長が促進された。諫早湾の赤潮プランクトンの大部分はマイクロ植物プランクトンに分類されるため, 湾内への調整池由来のDONの流入は, 赤潮を支える窒素源としてその長期化に寄与している可能性がある。

技術論文
  • 亀田 豊, 藤田 恵美子, 平井 一帆
    原稿種別: 技術論文
    2023 年 46 巻 5 号 p. 131-139
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    水道水中の20 μm以上のマイクロプラスチック (MPs) の汚染状況を高精度に把握する採取分析方法を開発した。比重分離法と顕微フーリエ変換赤外分光光度計を用いた機器分析により, 水道水中から91.0%のMPsを回収できた。水道水試料量の増加に伴い, MPs濃度の標準偏差は減少し, 1000 Lで変動係数は14.9%まで低下した。未使用のプランクトンネットろ過による屋外蛇口直下でのMPs採取では, 大気降下由来の汚染量は16.7 ± 6.4個だったが, 蓋の使用により低下した。最後に, 地下水を取水源とする水道水1000 Lを分析した結果, 12種のポリマーが検出され, 合計濃度は78 ± 10.4~2130 ± 358個 m-3であった。主要ポリマーはポリエチレン, アルキド樹脂およびポリメタクリル酸メチルで全体の56.5~94.0%を占めた。粒径分布のミディアン径は30.1~60.4 μmであり, 形状は破片状が多かった。

調査論文
  • 惣田 訓, 兒島 直美
    原稿種別: 調査論文
    2023 年 46 巻 5 号 p. 141-148
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    合流式下水道越流水が流入する平野川では, 底質から発生するガスによって浮上するスカムが問題となっている。本研究では, 大阪府が2021~2022年に実施した底質改善の実証事業の効果を底質微生物叢の変化から検証することを目的とし, 16S rRNA遺伝子を対象とした次世代シーケンサー解析を行った。南弁天橋付近の水深4 mの底質の試験区には, 約二ヵ月ごとに硝酸カルシウムが散布された。底質は極めて嫌気状態にあり, メタン生成古細菌Methanosaeta属が優占し, 硫酸還元細菌は少なかった。河川表層で増殖し, 底質に沈降したと考えられる緑藻の葉緑体DNAも検出された。メタン生成古細菌の優占が継続したが, 試験区の微生物叢は, Betaproteobacteria綱, Methylophilales目, Thiobacillus属の細菌の比率が高くなり, 酸化還元電位の上昇や全硫化物含有量の低下によって特徴づけられた。

  • 橋本 慎治
    原稿種別: 調査論文
    2023 年 46 巻 5 号 p. 149-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/10
    ジャーナル フリー

    2018年と2021年に手賀沼中央部において総一次生産量 (GPP) と生態系呼吸量 (ER) , クロロフィルa (Chl a) および栄養塩濃度を測定した。独立栄養生物群集, 従属栄養生物群集の活性はともに夏季から秋季にかけて高い値を示し, 水温の影響を強く受けていた。純生態系生産量 (NEP = GPP − ER) は調査期間を通してNEP > 0であり, GPP/ERの平均値は4.0であった。また, GPPの平均値 (9.4 mgO2 L-1 d-1) は閾値GPP (GPP = ERの時のGPP:1.6 mgO2 L-1 d-1) よりも6倍近く高い値であった。このことから調査期間中の手賀沼中央部は独立栄養状態であった。GPPとNEPの変動はChl a濃度の変動と密接に関係しており, GPPとNEPの変動の約40%をChl a濃度で説明することが出来た。

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