水環境学会誌
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調査論文
閉鎖性海域のCOD上昇
藤原 建紀鈴木 元治
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2024 年 47 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

閉鎖性海域の全窒素 (TN) ・全リン濃度は経年的に低下しているにも拘わらず, 化学的酸素要求量 (COD) は低下せず, 逆にCOD上昇がみられる。前報では, 海域のTN低下による有機物の組成変化 (C:N比上昇) が示され, これによる有機物の難分解化が示唆された。本報では瀬戸内海において同様な解析を行うと共に, 難分解化によるCOD上昇について調べた。これらにより以下の結果が得られた。TN削減により, 海域の有機物の組成変化と難分解化が起きた。この両者がCODを下げない方向に作用した。有機物の組成変化によって, 海域の全有機態窒素 (TON) は顕著に低下したものの, CODは低下しなかった。CODの難分解化によって, CODの生産量が増えなくても, 濃度が上昇する海域があった。調べたいずれの海域においても, 1990年以降, TN削減によって海域のCODは低下せず, 閉鎖性の強い水域では, 逆にCODが上昇した。

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