抄録
本稿は、自治体レベルにおける廃棄物マネジメント制度を改善するツールとして期待されているベンチマーク(BM)手法に着目し、その導入の意義と課題について、ニューパブリックマネジメントの理念に触れながら、ミクロ経済学が課題としている情報の非対称性の観点から検討を行った。BM手法は、自治体間の(廃棄物)行政パフォーマンスについて共通の指標により客観的比較を実現することを1つの目的としており、そうした情報を入手した市民や利害関係者からの働きかけもあって、各自治体が行政サービスをより一層改善するインセンティブをもたらす意義があるとされている。しかし、BM手法をシグナリング機能を発揮する制度として解釈すると、自治体側は自らの行政業績を誇張する誘惑があるため、その誘惑の存在を事前に認識していれば、情報の受信者である市民や利害関係者は自治体によるBM手法の成果公表を“真実である”と認識するとは限らない。信頼性の高い情報の提供手段としてBM手法を活かすためには、同手法を活かすための整合性のとれたデータベースの整備や監査体制などが課題となる。