抄録
芍薬と甘草の 2 種類の生薬から構成される芍薬甘草湯は, その鎮痛・鎮痙効果より平滑筋収縮によっておこる腹痛や月経痛, 骨格筋の痙攣によっておこるこむら返りなどの治療薬として繁用される漢方薬である。 臨床では, 傷寒論に基づき芍薬50%・甘草50%の配合比が主に用いられているが, 生薬で処方される場合には加味方も含め, 異なる配合比が用いられることがある。 しかしながら, これまで, 最も有効な芍薬と甘草の配合についての検討は行われていなかった。
そこで, 芍薬甘草湯の芍薬及び甘草の最適な配合比を, マウスの腸管運動に対する作用で検討したところ, 芍薬50%・甘草50%より構成される芍薬甘草湯が腸管運動を有意に抑制し, その効果はアトロピンに匹敵するものであることが明らかとなった。 このことから, これまで経験に基づき漠然と使われてきた芍薬甘草湯の配合比が腸管蠕動運動抑制に対して薬理学的にも最適な配合比であることが示された。