抄録
3 種類の漢方薬 (六君子湯, 抑肝散及び防已黄耆湯) が薬物動態学的相互作用を生じる可能性について検討する目的で, 代表的な薬物代謝酵素である Cyp3a および薬物トランスポーターである P-糖タンパク質 (P-gp) の活性に及ぼす影響をマウス in vivo 実験により検討した。
Cyp3a 基質であるトリアゾラムの血漿中濃度は Cyp3a 阻害剤であるケトコナゾールの併用により上昇したのに対し, 六君子湯, 抑肝散あるいは防已黄耆湯の連続投与による有意な影響は見られなかった。 また, P-gp 基質であるジゴキシンの血漿中濃度は P-gp 阻害剤であるキニジンの併用により上昇したのに対し, いずれの漢方薬も有意な影響を及ぼさなかった。
以上の結果から, 六君子湯, 抑肝散および防已黄耆湯はいずれも CYP3A あるいは P-gp の基質となる薬物と薬物動態学的な相互作用を生じる可能性は低いことが示唆された。